秋のサンシックンドリンシード

9月半ばから作り始めたサンシックンドリンシードオイル、もう2か月以上がたっている。アリの墓場。

真夏に作ったものに比べ時間がかかるのは仕方ない。6月7月あたりに作ったものは日照時間と気温の関係で非常に速くできる。1か月半もあれば充分か…、今回なぜこの時期に作ったのかと言えば、手持ちのオイルが底をつきそうなこともあるが、(今使っているものは武蔵野美術大学の絵画組成室で2年前の夏、大量に作られたもの。自家製はフランスに行ってる間にすぐに使い切ってしまい、わざわざ頼んで大学のものを送ってもらったのだ。そういえば、フランスではほとんどサンシックンドリンシードは売ってなかったなあ…。)気温の低いこの時期に作れば気温が低い分、酸化重合がそれほど進むことなく乾燥の早いオイルがもしかしたら作れるんじゃないか…、などという淡い期待をしてのこと。酸化重合が進むと粘りが強くなる分、顔料から絵具を作った際、可塑性を生かしにくくなる。要は流れるのだ。その流れを止める役割を果たすのが卵黄だが、あまりオイルが粘っこすぎると、その効果にも限界がある。できるだけさらっとしているに越したことはないのだ。もちろん、これはレンブラントのメディウム研究の続きの話であって、すでに最初から可塑性を持たせてある現代の絵の具を使って描く限り、必要のない実験ではあるが。…、そう、今だレンブラントに関する実験は続いている。ああ…。

ところで実際のオイルのほうだが、正直言ってほとんど自信はなかった。なぜなら前にも書いたとおり、うちの庭はこの時期、極めて日当たりが悪いのだ。気温が低い分、酸化重合は進まないが、同時に日当たりも悪いので太陽光での反応の進みもあまり期待できないわけだ。2か月たったオイルは見た目にはリンシードの黄色味が抜け、粘り気は生のリンシードよりはあるが、さほど強くもなく、さらさらした印象。ちょっとまだ早いんじゃないかなあと思ったが、でもまあそろそろためしてみるかと少量とってシルバーホワイトを練ってみた。練った感じは生のリンシードに近いのでさほど重くはなく、それのみで描いてみてもある程度の可塑性は保つ。(写真、左)しかしやはり時間がたつと多少は形がだれる。2年前の夏に作ったオイルで練ったものは厚塗りすると確実に形を保てない。(写真、右)また、粘りが強すぎて普通に描こうにも筆が自由に動かない。たぶん作った当時(2年前)にはもう少しさらさらしていたかもしれないが、大量に作って一斗缶にためていたため、使って量が減るにつれ、空気が入り込んで酸化重合がさらに進んでしまったのだろう、さらに色もかなりあめ色になっている。(写真にあるのは右から市販のサンシックンドリンシード、今回作ったもの、2年前の夏に作られた武サ美の組成室製。市販の物が一番色が濃いのは製造の最終過程でなされる加熱処理の結果らしい。製品としての安定性のための工程。)さて問題の乾燥時間だが、これが意外にも思ったより良かった。市販のサンシックンドオイル、2年前の夏製のものは指触乾燥が絵具層の薄いところで約1日半、今回のものも少しは遅いものの、ほぼ似たような乾燥速度だった。2日弱といったところ。生のリンシードで練ったものはまだ全く塗った時と変化がない。おそらく1週間以上かかるだろうことを考えると、今回のものはかなりいい線行っている。
さて、2年前のものと今回のものに卵黄を少量加えてみるとどちらも途端に絵具の伸びが滑らかになり、形も崩れることなく保つようになる。ただし古いほうのは多少だれ気味、今回のものは逆にちょっと形を保ちすぎにも思える。古典絵画のこってりとしたマチエールというよりむしろ現代のパサついた絵具の感触に近い。(写真は左から、生のリンシード練り、〈ほとんど現代の絵の具に近いぱさぱさした描き心地とマチエール。〉今回のサンシックンドリンシード+卵黄練り、〈多少粘りがあるがまだ少し丸みが足りない〉2年前の夏のサンシックンドリンシード+卵黄練り〈少し形がだれ気味〉)もうしばらくそのまま日に晒した方がよさそうだ。その方が乾燥性も高まりかえって都合がいいだろう。「秋のサンシックンドリンシード(アリのエキス入り)」…「キリン秋味」みたいでいけるんじゃありませんか?

ところで目下の問題点。卵黄を入れることで多少乾燥性が悪くなるということ。理由はよくわからないが、確かに少し遅くなる。ただそれが、極端な場合は1週間近くかかってしまうことがあるかと思えば、多少遅めくらいの時もあり、その辺もまだ探る必要がありそうだ。

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