佐賀にて

もうすでに1週間前の話になってしまった。現在佐賀県立美術館で開催中の「ホキ美術館名品展」でのギャラリートーク。前週にも行われていた若手二人、小木曽誠、塩谷亮のギャラリートークにはかなりの数の観客が訪れていたようで、我らおっさん二人組、大畑稔浩、小尾修でがっくり観客が減っちゃったらどうしよう…、なんてびびりながらの佐賀訪問だった。現地では佐賀テレビがかなり力を入れて宣伝してくれていたようで、その日の朝も我々の顔写真付きの宣伝がテレビCMに流れていた…らしい。自分じゃ見てないのでわからないのだが。そこまでしてもらってお客が10人くらいだったらよっぽど我々の集客力がないって言う証明になっちまうぞ…。佐賀の小木曽君は知っている人はよく知っているとおり、“絵描きとは思えないほど”弁が立つ。関西仕込みの話術で観客を笑かすところから始め、客を飽きさせない芸を持っているのだが、私と大畑さんはモノがなきゃ話がもたないタイプ。そこで事前に作品画像やらビデオを準備しての参戦となった。しかも、もしものための保険としてその小木曽君を司会に立てるという念の入れよう。我ながらお恥ずかしい。

当日は余裕を持って会場に入り、簡単に打ち合わせを済ませ、事前に会場を回って様子を見ることにした。場内はかなりの人出。皆熱心に1点1点の作品に見入っている。トークイベントは会場に入る前のちょっとした広いスペースにて画像を見せながらの話しで始まり、その後場内で実際の作品を前にそれぞれが自作を語るというもの。すでにイベント開始30分前くらいから人が集まり始めている。15分前くらいに私もそろそろスタンバイしようかと会場前のベンチに座って待つことにしたのだが、いつの間にやら大勢の人々が集まってきて、座席はほとんど埋まってしまっていた。ちゃんと背広を着てくる大畑さんとは違い、いつもながらの普段着で出ている私はどうやらすっかり観客と同化してしまっていたようで、後から着た大畑さん、小木曽君は私がどこにいるのか見つけられなかった様子。

 

結果的にはギャラリートークを見に来た観客は200人を超えていたらしい。中にはこの日のためにわざわざ神戸から足を運んできた方も…。見るからに会場いっぱいになった様子にちょっと胸を撫でおろしながらも、これで話しがつまんなかったらやばいぞ…、なんていう別のプレッシャーがかかる。「あぁ、小木曽君に司会頼んどいてよかった…。」

早速「今日は関東からわざわざ2人の先生がはるばる自転車でやってきてくれました…。」…なんて小木曽節を効かせて観客を笑わせる。おかげで出だしはリラックスできた。前半の画像を使ってのトークはそれぞれのこれまでの作品の移り変わりやこだわり、そして技法について駆け足で語り、会場では実際に自作の前で1点1点を解説した。質問のコーナーではたぶん自身も絵を描く方から「こんな絵を描くには何か普通とは違う特別な絵具を使っているのですか?」「これから絵を学ぼうとしていますがどんなことが大事でしょうか?」などと、率直な質問がぽんぽんと上がった。気付けば予定時間を超えて1時間半を過ぎていた。あっという間の90分。しゃべっている自分たちは楽しんでやれたが果たして聞く側にとってはどうだったろう、今となっては気にかかるばかり。

ホキ美術館名品展と同時開催中、美術館から歩いて10分ほどの所にある佐賀大学での「DRAWLING ~描く系譜~小木曽誠とその周辺展」にも午前中に足を運ばせてもらった。そこにも私と大畑さんの作品が各自7,8点ほど展示されている。実は私の作品のうち1番多くのコレクションを持っているのは勿論ホキ美術館なのだが、その次にまとまって持っているのは佐賀のコレクター。今回そのホキ美術館と佐賀にある作品が同時に公開されているので、これほど自分の作品を過去のものから最近のものまで1度に見られる機会は私にとっても珍しいことでもある。

 

佐賀大学の美術科は教育大学であるにもかかわらず多くの作家を輩出していることから最近よく話題に上っているので、知っている方も多いかと思う。そこには小木曽誠という教師の力が大きく関わっているのは周知のこと。彼が学生を駆り立て、地方から東京のギャラリーへ作家として押し出すまでのバイタリティーには目を見張るものがある。

その日も我々が大学に行くことを伝えるとすぐに彼が学生達に集合をかけ、朝から多くの学生達に会うことができ、展覧会場を見た足で彼らの教室も案内してもらった。人数が少ないとは言え、それでも決して広くはないアトリエではあったが、そこを効率よく仕切り、1年から大学院生までおのおのの作品制作にいそしんでいる様子を見て取ることができる。すべての学年の学生が一所で制作している姿は大きな大学では見ることができない風景だが、上下の学生がお互いを見ながら刺激し合える環境が絵を学ぶ上で大きなプラス効果を生んでいると言えるのだろう。彼自身のアトリエも学生達のアトリエの真向かいにあって非常に学生と近い関係を保っているようだ。教育大学と言うことで学生達が絵を描ける時間は驚くほど限られているようだが、さすが偏差値が高いだけあって我々に対しても質問が積極的だと感じた。

まだまだいろんな問題は抱えているにしても、この地でここまで学生達を盛り上げてきた功績は大きいと思う。

さて、そんなこんなであっという間の2日間。佐賀での展覧会はまだまだ続きます。あ、佐賀大の方は明日までかな?よろしければ両展覧会、是非ご覧ください。

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