JungGi Kim(キム・ジョン・ギ) Drawing Exhibition

  

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昨日から中野ブロードウェイにあるHidari Zingaroで韓国人キムジョンギ氏の個展が開かれている。すでにご存じの方もいるかもしれないが、彼はすでに世界的に活躍するマンガアーティスト。マンガアーティストなんて言葉があるわけではないんだろうが、彼について表現する適当な言葉が他に見当たらない。何ともユニークな活動をしている作家なのだ。

 彼は全く下描きもなしでいきなりペンで信じがたいほどの細密でダ

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イナミックなドローイングを描く。彼が描くのはいわゆるマンガ的な絵なのだが、それは一つのストーリーを語るために描かれたものではない。ひらめくまま、本能に従って描かれる壁一面の絵画。たった1点から始まって、まるで描かれたものが勝手に周囲に増殖していくかのように広がっていく。しかもそれ

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らはただ単に細部の羅列であるのではなく、全体が見えてくるにつれ、それが一つのうねるような大きな動きやリズムを形作っているのがわかる。いったいどこまで全体が見えて描いているのか、それとも描く中で自然と生まれてくる

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形なのか、不思議に思えてくる。目の前でみるみる世界が出来上がっていく、そんな彼のライブドローイングが一つのパフォーマンスとしての評価を受け、世界のあちこちから招待され、今や1年の大半を海外で過ごすほどになっているようだ。

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 もともと私が彼の名前を知ったのはfacebookを始めて間もない頃。私の投稿に”いいね”を押してくれた人をなんとなく見ていた時に彼の名前を見つけ、たまたま興味を持ち、「なんだこの人は」と彼のページを覗いてみたらものすごい密度のペン画の数々、フォロワーの数は9万人にも上る。ただ者ではないなと思ったのが初めだった。私自身韓国語がある程度できることもあり、さっそくコンタクトをとり、すぐにfacebook上の友人になった。以来、お互いの画集を交換するなどの交流を続けていたのだが、ついに今回彼が日本で展覧会をすることになり、初めて実際に会うことになったという次第。

 ついでにムサビを今年卒業したばかりの漫画家の卵、M君、私がキムさんと交換した画集を貸してくれと言うので貸したまま返してくれな

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いN君の2人も誘って会場に。

ライブドローイングは始まっていた。すでに会場はいっぱいで、立見席の後ろから中をのぞくのがやっとだった。スタッフの人たちが私を見つけてくれ、案内してくれたのだが、そんな中を押し分けていくのも気が引けるので、ひと段落するまで後ろからのぞいていることにした。遠くの方で黙々と描き続ける作家。周囲にはいくつもの

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カメラがその様子を撮影し、後列の人にも見えるようにモニターにその様子が映し出されていた。同時にそれはインターネットのUSTREAMで世界に向け、実況中継されていた。小1時間ほど描いたころ、いったん休みに入る。こちらに向いて観衆からのいくつかの質問に答えているとき、ふとこちらに気付き、目があった。(たぶんスタッフが合図してくれたようだ。)にっこり笑って手を振る。たぶん前で話を聞いていた人たちは何のことやら意味が分からなかったに違いない。初対面なのにすでにfacebook上で知り合っていたのでなんだか初めての気がしないというのは妙な感じだ。

休憩時間の短い間、隣のバーで挨拶を交わす。熱烈ファンのM君を紹介し、彼のデビュー作となるマンガの原稿を見てもらう。M君は韓国内で発売されていた彼の画集を

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2冊も買っていて、それを持参してきていた。そのことを話すと「じゃあ、サインしてあげようか。」と言って彼の持ってきた本を手にした。その途端いきなり大声で笑いだす。何のことだか訳が分からない顔のM君。「これ偽物だよ!」「どこで買ったの?中国人じゃない?」…道理で、さっき見た時からなんか紙が悪いなと思っていたら、そういうことか。不法で中国人が画集をコピーして売ってるものらしい。ショックを受けているM君に彼が一言。「大丈夫だよ。うちの社長だって騙されたんだから。これとおんなじもの持ってるよ!」そんなマンガみたいなことってあるんだな。そして彼は気を悪くするでもなくM君の”偽画集”2冊にそれぞれ見事なドローイングを観てる前でさらさらと描いて見せてくれた。本物のサイン入りの偽物の本。これにはいったいどんな価値が生まれるのだろう。

JungGi Kim(キム・シ?ョン・キ?) Drawing
Exhibition

会期:201559日(土) 526()

会場:Hidari Zingaro

512日までは毎日ライブドローイングを行うらしいです。…と、本人は言っていました。興味のある人は是非どうぞ。詳しくはこちら。

http://hidari-zingaro.jp/2015/05/junggi-kim-exhibition-3/

 最後に彼に一つだけ聞いてみた。「僕は自分のことを言うのに「画家」という便利な一言を使うけど、あなたは自分のことをなんだと思いますか?

彼の答えは”漫画家”だった。

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