学習机

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 来春1年生になるうちの下の女の子。そろそろ入学に備えていろんなものを準備しなければならない。そのうちの一つが学習机。今日、その机が家に届いた。

 ピカピカの一年生、当然女の子らしい、新品ピカピカの学習机かと思いきや、買った机は中古の机。たぶん昭和初期の年季の入ったもの。完全に私の趣味。どうも私は、家も家具も、新建材を使ったような新しいものが苦手だ。今住んでいる家も30年くらい前に建てられた農家の建物、リフォームする際にも、しっくい壁を自分たちで塗ったり、無垢材の床板を張ってもらい、ここの床は柿渋塗り、ここの床はリンシード仕上げ…、ここは無塗装…と、床ごとに自分で塗り分けてみたり…。プラスチックやビニール質の新建材を極力使わないようにしてきた。もちろん新建材が悪だというわけではないのだ

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が、それらの素材で作ったものは、たいがい出来上がった時が最もきれいであとはひたすら劣化していくだけのように感じる。いかに現状を維持するかに神経を使う素材とでもいうのだろうか。それに対して無垢の木材やらしっくい壁のような素材は時を経ていく過程が美しいと感じる。いろんな傷やら汚れが付くことには変わりないのだが、それが決してマイナスとはならずに味わいとして作用する。一緒に育っていく素材とでもいうのだろうか。だから我が家にはそんな古い時代物の家具やら自分で材木から作ったテーブル、インドネシア製の無骨な家具が多い。結局はその方が安上がりだったりする。今回買った机も2,5000円程度。完全無垢材のしっかりしたものにもかかわらず、ピカピカの新品を買うよりはずっと安い。

 ところでどうやらうちの娘は、遊びに行った友達の家にすでに置かれていたベッド付きみたいな新品の学習机を頭の中ですでにイメージしちゃってるようで、「白い机がいい」なんてとんでもないことを言っちゃったりしているが、ピカピカの1年生女子が飛び上がって喜ぶ新品の机はうちのインテリアに全く合わない。何より私の”美意識”がそれを許さない。ここは親の権限をいいことに昭和の重厚机路線で押し通すことにしたというわけ。あとはどう娘をうまく丸め込むかだ。

幸い上の5年生の息子は、男の子ということもあるかもしれないが、すでに同じような昭和の無垢材の机を何の不平もなく使っている。しかも友達とは明らかに違うそんな机をちょっと気に入ってさえいるようだ。まずはその線で攻めていくことにした。

 「昨日机を注文したぞ!お兄ちゃんのみたいなすごいかっこいいやつ。」「白いのがいい。〇〇ちゃんのみたいなの。」「いや、白くはないんだけどさ。ほかの友達が持ってないような立派なやつだよ。ぜーんぶ本物の木でできてて、ベニヤなんて使ってないんだぞ!みんなの使ってるようなやつは大人になったら使えなくなっちゃうけど、こういう机はねえ、ずっと使えるようないいものなんだ。今買いたいと思ってもなかなか売ってないんだぞ!…なあ兄ちゃん。そうだよなあ?ほかに持ってる子なんていないだろ?…ほらお兄ちゃんもそう言ってるじゃん。いいなあ。お母さんもそういうの欲しいだろう?…あら大変だ。お母さんも狙ってるらしいぞ。お前がいらないって言ったらすぐお母さんにとられちゃうぞ!!

…ということで何とか丸め込むことに成功したようだったが、でも実際に現物を目の前にするまではどうなることか予断は許さない。

 実は今日、娘が家を空けている間に机が到着した。そこで妻と私は結束して、とにかく娘が帰る前に見事なセッティングを終え、帰ってきた娘が”すごいものが来た。”とびっくりするような状態に”演出”することにした。梱包をはがし、きれいに磨き上げ、今まであった本棚を移動して机をセット、それまで長男の描いた絵やら学校のプリントなどが雑多に貼られていた壁面をきれいにはがし、見た目をすっきりさせる。昨日買ったばかりのライトを置き、小さな小物を置く棚をのせる。仕上げに娘が最

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近描いた絵を机の正面の壁に貼った。これでいつもとは違った美しい子供部屋に大変身。娘の帰りを待つ準備は整った。机のことには全く触れずに娘を車で迎えに行き、帰りにホームセンターで椅子を買う。「新品の椅子だぞ!」…車を降り、玄関をくぐる。いよいよ緊張の瞬間。「うわー!」と歓声を上げるのか、それとも「エー…」と不満を漏らすのか…。

 結果は「わたしのつくえー!わたしのつくえー!」と歌いながらお尻を振り振り踊りまくるという想像を超えるみょうちきりんな反応だった。…とはいえ、これでひとまず一件落着。しかしこんなことのためになんでここまで苦労しなきゃなんないんだ。

 

2件のコメント

  1. 木下 翔平
    2013-12-25

    小尾修様
    はじめまして。
    最高の記事ですね。ほのぼのしました。親子系の記事はたまらないものがあります。
    画家として、小尾先生のことをとてつもなく憧れの存在と見ております。
    ですが、思わぬ好記事に出くわしまして、二度おいしい気分です。
    あんな、アンティークっぽい木の質感が出た机なんてもっている子いないですよ。本物に子供の頃からしっかりと触れることのできる環境がうらやましいです。どんな、感性に育っていくのか楽しみです。
    私も、先生のような偉大な先輩方にあこがれて油絵を描いています。
    美術の窓や、ブログの記事にとても感謝しています。
    (もし、良ければわたしのブログに訪問していただけないでしょうか。ご指導いただきたいです。小尾様のホームページアドレスを私のブログのリンクに貼ることは可能でしょうか。)
    お体に気をつけて、絵画制作されてください。応援しております。

    返信
  2. Osamu Obi
    2013-12-25

    熱心に読んでくださっているようでありがとうございます。
    もちろん私のページをリンクに貼っていただいて差し支えありません。
    国画会に出品しているのですね。いい絵を描いてください。

    返信

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