最近のKay君

  もう帰国後1年以上になるというのに定期的にこのブログに登場するKay君。別に書かなくてもいいのだが、これを読んでいる人たちから彼の名前を聞く機会が結構あるのでなんだか半分時々報告しないといけないような義務感が生まれてしまっているみたいだ。

 実はここ数日また頻繁に彼からメールが届いている。どうやらまたルーブルでの模写を始めるらしい。今回はティツィアーノ。模写のためのいいテキストがないかというので、ちょっと古いがナショナルギャラリーの「テクニカルブリテDSC_0566.jpgン」に掲載されていた「バッカスとアリアドネ」の修復に関するデータを紹介した。しばらくするとそれを読んだKay君から「ティツィアーノの下地は石膏地だと書いてあるけどやり方がよくわからない。知ってるかい?」との返事が。「おそらくは産地の問題でフランドルは白亜、イタリアは石膏ということなんだと思うよ。板地の場合は膠で溶いて水性地でOK。ただしティツィアーノの場合キャンバスだろうから厚塗りすると割れるよ。原画の下地の感じを見て薄塗りでよさそうなら水性地でいいと思うけど、平滑な塗りで厚塗りが必要だったら油で練るか、エマルジョン地にした方がいいんじゃないかい?いずれにしても地作りから始めるんなら生のキャンバスからやるよりは市販のキャンバスの裏側を使った方が楽だと思う。」

すると翌日「下地の塗りは薄いみたいだ。さっそく生のキャンバスを買ったんだけど、膠は両面に塗った方がいい?」だって。まったく、生だと教えるのが大変だから市販のキャンバスの裏にしろって言ったのに…。ただでさえ翻訳ソフトを通してのやり取りは手間がかかるうえ、細かいニュアンスを伝えるのが大変なのに。なんでヨーロッパ人に西洋絵画の技法についての通信教育をしなきゃならないんだ???…なんてことをぶつぶつ言いながら、去年のブログを見てみると、一度Kay君のアトリエでいろいろ教えてあげた際、実際にキャンバスに膠塗りの作業をやって見せてあげていたことが書かれてあったのを発見した。http://www.osamu-obi.com/blog/2011/05/in-paris-1.htmlそこで「そこまで下地から厳密にやっても模写の出来には関係ないぜ。」なんてことは言うのはやめて、その時のことを覚えているかとのこと、膠は乾く際に縮むので最初は緩めに張って膠を塗り、乾いてからいったんはがして張り直した方がいいこと、などを何とか苦心して伝えた。模写の開始は来年1月中旬だという。前回のダビッドの模写は途中でくじけたらしいが果たして今回はどうなることやら。それにしてもティツィアーノの作品がある部屋って、たぶんモナリザがある部屋じゃなかったかなあ。人だらけでとても落ち着いて摸写できるような場所じゃなかったように思うけど…。

 もしこのブログを読んでいる方のうち、来年の初めにルーブル美術館に行く予定の人がいるようなら、注意してみてください。午前中から昼の1時半より前にかけて、もしかしたら彼が描いてる姿が見られるかもしれません。その際にはその様子をぜひご報告ください。

…ところで最近彼は合気道を始めたらしい。相変わらず人生楽しんでるみたいです。

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