ジャングル

昨日でようやく2週間続いた”魔の”スクーリングが終わった。約70名の学生全員が脱落することもなく立派な模写を仕上げていったのにはいつものことながら感動すら覚える。もちろん徹底的な指導の中で教員たちの手がところどころ入っていることはあるとはいえ、中にはかなりのレベルの高い作品もあり、この短い期間の中でよくここまではじめてのテンペラをこなしたものだと思う。1週間の過酷な作業の中で学生さんたちの中でもある種の連帯感のようなものも生まれたようで、最終日の昨日の夕方から近くで有志の打ち上げも計画されていたようだ。我々スタッフの方も2週間のお疲れ打ち上げで昨日は遅くまで盛り上がった。毎年同じように行われてきたこの打ち上げだが、今回はちょっと特別だった。実はここ、絵画組成室の専任教授、斎藤教授は今年で退任することになっている。今回は斎藤教授のいる最後の打ち上げ。斎藤教授については書こうとすればきりがない。いつか時間があれば書こうと思うが、今は書くには時間が足りな過ぎる。私がかつてムサビに入学したとき、その年から油絵学部に絵画組成…簡単に言うと技法材料の授業が新設された。その授業を担当していたのが当時はまだ非常勤講師だった斎藤先生、鈴木先生の2人だった。つまり自分は先生にとっては油絵学科、第1号の生徒ということになる。当時、我々は掘立小屋に近いぼろぼろのプレハブ小屋で行われていたその授業で油彩の下地から技法に至るすべてを学び、私自身は授業以外でも”主(ぬし)”のように組成室に入り浸って下地作りやら額作りに励んでいた。卒業し、幾年かが過ぎたのち、今度は非常勤講師として再び組成室に通うようになり始める。教える立場となり、あらためて技法について斎藤先生、鈴木先生の研究に加わる中で自分自身が学び直すことになった。今の自分自身の技法に関する知識や方法の基盤はほぼすべてそこから来ている。おそらく現在活躍中のムサビ出身の写実系作家の大部分はその技法の面で、直接的、間接的に斎藤教授の影響を受けていると言っていいだろう。少なくとも、そこを通過している。そんな教授が今年で退任する。なんだか妙な気分だ。見た目にも斎藤教授は今年退任の70歳とはとても見えない。大体この暑い中、家から10キロ近い道のりを毎日自転車に乗って短パン、Tシャツ、サングラス姿で登校してくる、柔道で鍛えたどっしりとした筋肉質の体を持つ真っ黒に日焼けした70歳なんてほかにいるだろうか。…とにかく来年はもういないなんて言う感じがどこにも感じられないのだ。…とはいえ、年齢的には本当に退任の年、これまでのことから解放されるという実に素直な喜びやこれからやりたいことに対する希望を嬉々とした笑顔で語る横顔の一面には、やはり今までを振り返って思うさまざまなこともあるようで、そんな教授の姿を見るこちら側すべての者に、いつもとは違う何か特別な気持ちを持たせられる何かがあった。蝋燭の光をともしながら教授のとっておきの曲、コレッリの「ラ・フォリア」を聞いたひと時はたぶんこの先その場にいたすべての者にとって忘れられない記憶となることだろう。

さて、ここしばらく昼間家を空けている毎日が続いた我が家の庭。今日久しぶりに見るともう手が付けられないほどのジャングル状態となっていた。ちょっと歩くだけで顔面に蜘蛛の巣直撃。池は高く伸びた草むらを掻き分けていかないとどこにあるのかわからないような状態。ちょっと呆然とする。よくよく見ると、野生化した我が家のトマトに鈴なりのトマトがなっている。いろいろ発掘すればまだ食べ物が発見されるかな?

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