本日の1枚

先日使い古して使いづらくなった筆を整理していたところ、横でそれを見ていた娘が捨てようとしていた筆を見て、「おとうさん。それもらってもいい?」というので10本くらいをあげた。昨晩、食後にちょっとへばって横になっているとき「お父さん、いっしょにえのぐやりたい。」という。一人で勝手にやればいいのになんでも一緒にやりたがる悪い癖。さんざん逃げようとした挙句、結局つかまって描かされる羽目に。何を描くのかと思ってみると赤い絵の具ででっかいまるを描き始める。さすがは4歳児。やることが大胆で勢いがある。しかしみたところ、まだ、たまたまそこにある色を適当に塗っているだけなので画面上の色の組み立ても何もない。そこで適当に色を加えたり、混色したり、点を置いたり、タッチを入れたりして適当に形をしめたりしながら一緒になって遊んでみた。そのうち娘もつられていろんな色を使いだす。点描みたいなことも始めている。そうやって出来上がったのがこれ。

ところで今朝、また「えのぐやりたい。」と言う。もう付き合ってられないので今度は「自分一人で全部やれるんだったらやっていいよ。」と言うと、ぶつくさ言いながらも一人で紙を取りに行き、絵具を出して何やら描いていた。午前中アトリエで作業をしてたのですっかり忘れていたが、昼ごろ娘が階段を上ってくる音が。「おとうさん。ちょっとしたにおりてきて。えをはったからみてほしいの。」しょうがないかと見に行くと、廊下のひくーいところに何枚かの絵がきちんと貼られている。そのうちの1枚がこれ。正直言って驚いた。昨日親がやってることを傍で見ていてかどうかはわからないが、それなりに自分で色を混色しながら全体の色や明暗のバランスをちゃんととっている。たぶん本人はほとんど何の意識もなくやっているのだとは思うが、塗り残しの部分までまるで計算したようにも見える。おまけに何のためらいもなくやっているので筆のタッチに勢いがある。まあ、4歳くらいの無意識の部分のまだ強い子供というのは何かピタッとはまると結構すごいことをやるもんだなあと思う。

この子が最初に絵の具を使ったのは2歳のころ。アトリエにトコトコやってきて自分にもやらせろというので椅子に座らせ、まだ自分で自由に何かをできるわけではないので水彩のパレットの絵の具を見て、「この色。」と差したらその色を筆につけてやって渡す。また次の色を差したら次の色…。というようにまるで親を”しもべ”のように使って描いたもの。まだこの年齢では絵を描くというより手の運動。粘土をただこねて楽しむのとほぼ同じ行為だ。しかし身体の動きそのものの楽しさだけでやっている分、線も自由で、たたいたり、こすったり、なでつけたり…表現そのものは大人のそれよりかえって豊かだ。それなりに見ていて面白いものができる。

幼稚園くらいになると特に女の子あたりは少しずつ手先が器用になる分、お決まりのキャラクターのようなものを描き始めてやや絵としては自由さが失われる時期でもある。うちの娘も普段そんな絵を描いたりしているのだが、今日の絵はどこからどう見ても純粋な抽象画。不思議に思って聞いてみた。「この絵は何かを描いたものなの?」娘の答えは明快だった。「うん。習字!」…なるほどね。

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