学生たち

ここしばらく庭を見ることもできずにいた。久しぶりに昼間、家にいたのでふと見てみると、だいぶ雑草がはびこり始めている。でも雑草であっても緑が増えた分、なんだか庭は豊かにも見える。今はシランが美しい花を咲かせている。ムギナデシコもようやく咲きだしてくれた。毎年こぼれダネで増えるカモミールも小さな白い花を咲かせている。日陰ではユキノシタが首を持ち上げ白い涼しげな花を咲かせ始めている。目立たぬところに黄色い花が咲いているのでよく見ると、もしかしたら昔ためしに植えてみたニッコウキスゲ…?自信はないのだがそんなふうにも見える。誰か詳しい人がいたら教えてほしい。
ついに昨日、蚊に刺される。ちょっと庭のあちこちを見て回っただけというのに3,4カ所刺された。これから11月まで、我が家に蚊取り線香は欠かせないものになる。

先週から久しぶりの武サ美での授業が始まった。3年生を対象とした4週間の技法研究の授業。イタリアテンペラ、フランドル派、ヴェネツィア派以降の技法に分かれ、それぞれ下地作りから描画に至るすべてを主に模写を通じて学ぶのだが、数年前からはそのうちの1週間から10日ほどを使って希望者を対象にフレスコ画の授業も行うようになった。今回そのフレスコの授業に学生に加わって参加してみることになり、先週はほぼ毎日の出講となった。フレスコについては理屈としては知っていてもまだ実際に描いた経験はなく、制作の実際について、一度きちんと基本的なことは知っておきたいと思っていた。1週間の授業の中で、パネルづくり、西洋漆喰による下塗り、上塗り、インチジオーネによる転写、そして水に溶いた顔料による描写と続く一工程を経験する。その間に去年授業を取った学生たちの作品のストラッポ作業も行う。金曜日は最終的な描画の作業、一旦始めたら乾く前、その日のうちに仕上げなければならない。午前から始めて結局終わったのはもう時間切れの10時過ぎだった。慣れない素材に戸惑いながらの作業、気付くともう夜中。周りを見ると途中授業のため抜けなければならなかった学生たちもみな戻ってきてほぼ全員残って描いている。おそらく自分が帰った後も近くに住んでいる学生たちは斎藤教授がカギをしめに来ると言っていた11時過ぎまで描き続けていたはずだ(斎藤教授、学生たちが少しでも長く描けるよう、その時間まで残っていてくれるのだ。)。その間教室内は誰一人、口を開くこともなく、おそらく皆食事をとることも忘れて一心不乱で自分の画面に向かっていた。これだけの時間、集中力を途切れさせることなく”一心不乱に”描くというのは、絵描きとして大切な素質の一つと言えるだろう。もちろんそれが全てではないが、重要な要素であることは確かだ。集中して描く間、誰一人質問すらしてくることはない。もちろん質問されても造形的な観方に関して以外に、こと実際的なフレスコの技法に関しては、まだ答えられる立場ではないのだが。彼らは彼らなりに新たな素材に対し、言語ではなく自分の目と手の感覚で考え、解決法を導き出そうとしているように見える。経験による上手さは無くとも、ああでもない、こうでもない、と探ることによって生まれる手数は、とても1日で描けるとは思えないような密度となって絵に現れている。そんな学生たちの姿は、あらためて「ムサビの学生たちもなかなか捨てたもんじゃないね。」と思わさせてくれる。学生たちが頼もしくさえ思えた。うちの学生たち、なかなかやりますよ。

…ところで私がやったフレスコ模写はこんな感じ。

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