焼き物好き

フランスから帰ってきてどうにも我慢できずに買ったもの、エスプレッソメーカー。思い切って買ったといってもせいぜい1万円程度だが。1年間むこうにいてすっかりカフェで飲むエスプレッソの味に慣れてしまい、ペーパードリップ式のだけでは何か物足りなくなってしまったのだ。向こうでは豆も安い。味もいろいろだが、おいしいものでも250グラムで300円台あれば充分。実は帰るときいろいろ試した中で一番口に合うものをスーパーでまとめ買いして帰ってきた。それを当初はパリの蚤の市で安く買ったリモージュ焼のカップで飲んで満足していた。あるとき「ちょっとまてよ?」と思いつき、うちにいくつかあるぐい呑で飲んでみた。これがなかなかいい。大きさもちょうどエスプレッソを飲むのにぴったりだ。「リモージュ焼よりずっといいな。」そんなわけで最近はもっぱらぐい呑でエスプレッソというのが決まりのようになっている。つい最近インターネットのオークションでたまたま見つけ、志野焼のぐい飲みを競い相手もないままに開始価格で落札したのだが、これがけっこういい。いつの時代のだれのものとも分からないものだが、ざっくり作ったおおらかな感じ、無造作にゆがめられた形が持つ手にしっくりくる感じ、口縁から胴にかけてののあかみがかった複雑なテクスチャーに対して上からのぞいた見込みの滑らかな白が妙にきれいに見える。10年以上前から我が家にある、萩の作家、兼田昌尚さんから頂いたぐい呑と二つ並べ、今日も妻と食後のコーヒーを飲んだ。

実は焼き物好きが始まったのは20代半ばの頃だったか、妻と結婚するだいぶ前、韓国の妻の家にお邪魔するのに何か日本的なお土産はないかとたまたまデパートの萩焼コーナーで湯呑セットを買ったのが始まりだった。以来、意外にこれは面白いと、あちこちの焼き物の店をまわったり展覧会を見たり(たぶんそのころは絵の展覧会より焼き物の展覧会のほうがよく行っていたんじゃないかな)そのうち見るだけじゃもの足りずに大学の授業(生徒じゃなくて先生としてです。)の後、教室の裏で一人でこっそり七輪陶芸をやり始めてみたり、夜行バスで一人萩に行き、あちこちの窯元を訪ねて作家と話したり、ずうずうしくもその場で土をいじらせてもらったり…。もちろんずっと貧乏人だったのでそれほど高価なものを買えるわけではないのだが、ちびちびと気に入ったものを買って食卓に並べてきた。知り合った作家さんと作品交換と称して物々交換したもの、ちょっとしたキズものということでただで譲ってもらったもの、アンティーク屋やら中古の業務用品屋で見つけた和、洋、(中にはアフリカも)様々な古いものやらガラクタ類など種類も様々。その間20年以上かけて集まったものはあらためてみるとかなりの量になる。これについて語り始めたらちょっと終わりがなくなりそうなので今日はこの辺にしておくが、この焼き物の趣味と自分の作品とはあながち無関係ではないかもしれない。自分の好む土物のざっくりした肌はまさに物質そのもの、油絵の具の物質性とどこか近いものがある、物質感のある地肌にかかる透明や半透明の釉薬はまさに可塑性のある下層描きの上のグレーズそのものともいえる。油絵のグレーズに対する用語の中に「エマイユ効果」という言葉があるが、まさしくそれは「釉薬(七宝)のような効果」という意味なのだから。

…その後のサンシックンドリンシード…。前回写真をのせた時と比べて2つの容器の油の色に違いはほとんどなくなった。あとから始めたものも日に晒されてだいぶ脱色されたようだ。先に始めた方は幾分とろみが出てきている。そろそろためしに1度シルバーホワイトを練ってみようか。早く乾けばこの程度の粘調性でちょうどいいかもしれない。ただ、実際その間、かなり日に当たっていた時間は短いので実のところあんまり自信はない。

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