オイルスケッチ(その5)

今回のモデルは黒人女性Miaさん。11月のブログで一度彼女の事を書いている。クロッキーのアトリエで描いたことがある人で、今までクロッキーのモデルを何人か見てきたが、その中でも最も印象に残っているいいモデルさんだ。これまでイタリア人続きのオイルスケッチだったが、今回はフランス生まれのちゃきちゃきの(?)パリジェンヌ。実は11月、クロッキーのアトリエが終わった時に思い切って声をかけてみていたのだ。まだパリに来て間もないころ、フランス語も英語もわからず人と話す度胸もなかった時の話。(フランス語も英語もわからず…、の部分については今もほぼ全く変わらないが。)幸い彼女のほうがこちらの描いたクロッキーを見て興味を示しているようだったので、この機を逃すともう会う機会もないだろうとなんとか話をして連絡先を聞き、こちらの名刺を渡し、機会があればまた描いてみたいと伝える。後ほど一度挨拶のメールをうってみたが、その後、何の応答もなかったのでまあそんなもんだろうなとそのままのしておいたのだが。ところがつい先日、彼女の方から今もモデルを探しているか?との連絡が入った。どうやら渡してあった名刺をなくしてしまい、最近それが出てきたらしい。ちょうどオイルスケッチを何枚か試し始めたところだったこともあり、早速お願いすることになった。それにしても、こちらのモデル事情は日本とはだいぶ違うようだ。Patriziaさんにしても今回のMiaさんにしても、初めての仕事でモデル側からこちらに働きかけてくることは日本では経験上あまりない。金額的にもたぶんこちらの方が安めのようだ。こちらのモデルは特に事務所に属しているわけではないらしい。それにしても日本だったら、言葉もよくわからない外国人に自分のほうからコンタクトをとって仕事をする人はたぶんほとんどいないのではないか。おかげでこちらとしては非常に助かっているわけだが。いずれにしても、今回名刺代わりにこの自分のホームページをきちんと作っておいたことは正解だった。こちらでは何の肩書も持たない1外国人。このホームページがあることで、ある程度、入口としての信頼感を得る助けには充分なっているように思う。

今まで黒人を描いたことはなかった。11月に描いたクロッキーは別として。その今まで描いたことのない肌の色をどう表現するのか、今回は技法的な部分よりは、モデルを見て感じたことをそのまま単純に”描く”ことを優先するつもりで描いた。
ところで約束の時間になっても彼女が現れない。しばらく待ってこちらから連絡を入れてみると、「今電車の中です。ごめんなさい。1時間半ほど遅れますが、もし遅すぎるなら明日にした方がいいですか?」たぶん寝坊。結局予定より2時間遅れのスタートとなった。こちらに来て1年近くになると、こんなことにも慣れてしまった。

黒人の肌の色はあらためて見るとやはり単純な黒ではない。オレンジ色から茶色、そして灰色、黒。同じ明度の部分でも色味が違っていたりする。ちょっとカブトムシの色に近いと言ったら怒られるだろうか。しかしそれが綺麗なのだ。暗い色のため、白人のように明暗の変化が見つけにくく、明暗でボリュームを出すのには多少の苦労を伴う。明暗での強さの代りに、大きな目の中の白、笑ったときの歯の白さはひときわ鮮やかで強い印象をもたらす。同じ人間でも、アジア系の骨格が浅く毛髪の黒い我々の顔が輪郭の線的要素が強いとすれば、彫りが深く、毛髪の色の薄い白人は、眉毛、まつ毛など、縁取り的な要素よりは、明暗によって形態を表しやすい。そういう目で見ると、黒人は肌の黒、歯の白、というように色面的要素の強い顔と言えるかもしれない。それぞれの美術表現の向かってきた方向とこのことはあながち無関係ではないように思う。
今回もまた3時間弱、あっという間に過ぎた。ちょっとまだ色が浅いが短時間のスケッチとしては悪くはない。乾燥した後グレーズでもう少し深めるかどうか考え中。いずれにしてもスケッチ的な部分は残しておきたい。

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