オイルスケッチ(その4)

今回はバカンスですでにローマに帰ってしまったイタリア人モデル、Patriziaさんの紹介でまたもイタリア人、Fabianaさんを描くことになった。どうも最近イタリアに縁がある。今回も、目的はオイルスケッチ。レンブラントの模写から得られたものをもとに調整したメディウムを試してみようというものだ。もちろんこれでレンブラントのような絵が描けるかということも実験としては大事だが、絵描きとしては、それよりはこのメディウムで描いて、いったい描き易いかということのほうが重要だ。なので描くにあたってはそれほど「レンブラント風」を意識せずに描いている。

今回は前回のPatriziaさんの時とは違い、再び下地は板地。白亜地の上に茶系のインプリマトゥーラを施したものの上に描いた。手順としては前回とほぼ同じ。バンダイクブラウンによって大まかに形と暗部の調子を入れた後、明部にシルバーホワイトを多めに用いながら描き込んでいく。使用した色はシルバーホワイト、バンダイクブラウン、イエローオーカー、バーントシェンナ、アイボリーブラック、補助的にクリムソンレーキ。そのうちバーントシェンナとクリムソンレーキ以外は全て前日に今回のメディウムで手練りしておいた絵の具を使用。基本的にテレピンはほとんど使わない。薄めたいときは作ったメディウムをそのまま希釈剤として使う。なので特に暗部のグレーズはかなりのオイルリッチな状態になるが、このメディウムを使う場合、流れることなくボディーを保つので油まみれでヌルヌル滑って描きにくいという現象は起こりにくい。

実際にこのメディウムを使って描くのは小さなオイルスケッチ5枚目なのでまだ充分自分のものとしてこなせていないが、それでも前よりは感じがつかめてきた。前にも書いたがこの方法だと透明感を出すのに単純にメディウムを加えるだけなので、自然にレンブラントに見られるような”ボディーのある透明な暗部”が生じる。もうひとつの特徴は滑らかに描ける状態でありながら、乾く前に画面上で次の色を下の色と混ざることなく「のせる」ことができるということ。単に乾性油だけでの作業の場合、描いてすぐだと他の色をぼかし込んだり混ぜ込むことはいくらでもできるが、次の層を「のせる」のは難しい。下の色と混ざってしまう。例えば髪の毛などを描く場合、やわらかい筆でぼかしながら描く部分とハイライトなど、不透明な白を多く含む色でシャープに勢いよく描きたい部分があるが、いきなりその両方をやろうとしてもなかなかうまくは行かない。実際はある程度下層で大まかな色を置いて乾かしたうえに、まずは暗い部分を薄くぼかしながら置いていき、少し時間がたって半乾きの状態になってきたところにハイライトを入れていく。その状態ならかなりシャープな細い線も引けるしさらにその上に暗めの色をかけても半ばグレーズに近い効果も出せ、要は混ぜることものせることもできるような中間的な絵の具状態で作業ができる。もちろん時間をかけて描写するような場合はそれでも充分だが、今回のような3時間以内で描くようなオイルスケッチの場合、そこまで待ってはいられない。しかし今回試している方法ではその「混ぜることものせることもできるような中間的な絵の具状態」が、初めから生じている。髪の毛の部分など、茶系の下層の上にバンダイクブラウンや、若干のバーントシェンナで暗く色をのせ、最初は豚毛の筆などで明部の色を抜き取ることで筆跡を残しながら下地の色を出す。その上に通常ならある程度乾きを待つところ、そのままシルバーホワイトとイエローオーカーを混ぜたハイライトを不透明に入れてみたが、ほとんど下でやった作業を壊すことなくかなりシャープな状態で描き進めることができる。

今回の作業自体は前回のPatriziaさんの時とほとんど同じことをやっている。しかしほぼ同じ色を使っているにもかかわらず前回のものより既に色味の幅が出ているのは下地の色の違いだろう。いずれにしても、いったん乾燥させたうえで一層グレーズを重ねるつもりだ。

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