イタリアその2‐フィレンツェ(つづき)

3歳の娘を連れての旅行、歩く距離には限界がある。小3の息子のほうは大人と同じペースで歩いても、いや、時には大人以上に歩くこともできるようになっているが、娘のほうはそうはいかない。抱っこで歩くにはこちらがもたない。パリではベビーカーが必需品となっていたが、今回の旅行では、初めの頃にベビーカー代わりにしていた台車付き買い物袋の復活となった。いかにも安っぽいオレンジ色の目立つやつ。毎日駆使してすでに取手も欠けている。しかしこいつの優れた点は、ベビーカーよりずっとコンパクトで軽く、邪魔にならないこと、そして今回の目的地、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアは石畳の道が多いこともあり、ベビーカーを押すとあちこち引っかかって苦労しそうだが、こいつはひっぱって歩くのででこぼこ道でも楽に動かせる。ヴェネツィアのようにちょっと歩くとすぐ階段、という所でも楽チンだ。目的地の移動の際には小さな荷物はみなこの袋に詰めて縛ってしまえばスリ対策にもなる。ただ、さすがに海外旅行の飛行機にこんな買い物袋で乗ってくる人はうち意外に一人もいないようだったが…。実際行ってみるとどこもあまりベビーカーを使っている人は見なかった。だからと言って買い物袋に子供をのせてる人もいなかったが…。
午前中、ミケランジェロ広場に登ろうかと歩き始め、途中のスーパーで買い物をする。ちょうどその近くにチョンピ市場(だったかな?)小さな広場にアンティーク屋の小屋の集まったような場所があるのでのぞきに行ってみた。(これも塩谷マップの情報。)バカンス期間のためか、半分以上の店は閉まっていたが、いくつか空いてる店があった。必ずしも古いものばかりを扱っているわけではなさそうだったが、意外に面白かった。パリのクリニャンクールはすごいが、値段はちっとも安くはない。ここは、1ユーロ、2ユーロから買えるものもあり、人も少ないのでゆっくり楽しめる。いくつか安いものをまとめて買った。値段も交渉すると結構まけてくれる。気が付くと時間が過ぎてしまった。ウフィッツィー美術館の予約は12時15分、今からミケランジェロ広場までのぼって帰ると食事の時間もない。暑さもきつい中ちょっと無理そうだと断念。夕方に行けたら行こうということにして食事をとることにした。

ウフィッツィー美術館。コの字型にのびた長い通路の両側に作品の展示室が連なり、巨大なルーブル美術館と比べれば小ぢんまりとした美術館だ。コの字型の長い通路の内側は一面大きなガラス窓。明るい光が差し込み、そこに展示された彫刻たちを照らし出す。川沿いの窓からはベッキオ橋が綺麗に見える。内部に木材がふんだんに使われているせいか、なぜか懐かしいような感覚をおぼえる。さすが地元だけあってボッティチェリの作品をはじめとしたイタリアテンペラなど、ルーブルのものと比べてかなり質の高いコレクションがそろっている。他にもダビンチ、ラファエロ、ミケランジェロ…、ルネサンス期の作品は充実している。ラファエロの作品についてはルーブルにも似たタイプの聖母子像があるが、こちらのものは修復が終わった後で、ラファエロの非常に鮮やかな色使いを見ることができる。ところでこちらの監視員、ルーブル以上にちゃんと仕事をしていない。ルーブルでもたいがい監視員は何人かでわきで喋っていたり適当に歩き回っていてロンドンのナショナルギャラリーのようにちゃんと監視しているという雰囲気がないのだが、さらにそれを上回る。しかもお客は多いのに、それに対する監視員の数が少ないようだ。一応館内は写真撮影が禁止ということになっているが、見ると客はみんな首からカメラをかけて歩いている。試しに何枚か写真をとってみたが誰も見ていないのでなんの問題もなかった。作品の写真は撮れなかったが、もしかしてやってみたら案外平気だったかもしれない。美術館を見る間、子供達は初めは物珍しげにおとなしくしていたものの、人ごみの中、すぐに飽きてしまい、抱っこしろだの、いきなり「ウンコがしたい」などと言いだし美術館の端から端まで走らされること2回、大変な美術鑑賞となった。美術館から出るころには暑さもピーク。人ごみと暑さにやられ、すっかり疲れ果ててしまい、一度宿に戻って休まざるを得なくなった。夕方、さっき行きそびれたミケランジェロ広場に向かう。まだまだ暑い。ベッキオ橋前の道に出て気がついた。以前来た時は川沿いの道には車の行き来が激しくベッキオ橋前には交通整理の警官が出ていた。(しかし人々は関係なく交通整理の警官の横を次々勝手に渡っていたのが印象的だった。)今は車はほとんど通らず、人々の通行であふれている。どうやらここも交通が制限されているらしい。そう言えば街のどこを歩いても車が少ないようだ。よく観察すると街のあちこちに簡単なフェンスがあって車が入ってこられないようになっている。おかげで歩いて観光するにはとても好都合だが、実際住んでいる人には結構負担も多いのだろう。以前来た時には昼を過ぎるとどの店も昼寝で閉まってしまっていた。美術館さえも。やることのない人達がアルノ川の川辺に降りて行ってゆっくり過ごすのに交じって、仕方がないので暇つぶしに落ちている木の枝でいかだを作って浮かべていたことを思い出すが、今は美術館も店も、やっているところが多いようだ。代わりにアルノ川に降りる入り口にはカギがかけられ、勝手には降りられなくなっていた。20年もたつと、それなりの変化はあるようだ。そう、もうひとつ、イタリアは、きっとパリ並みに犬の糞はごろごろ落ちているに違いない。と思っていたのだが、実際は意外にも綺麗なもんだった。ヨーロッパにおける「犬のウンコ天国」はどうやらパリがダントツ1番!…ということになりそうだ。

ミケランジェロ広場に向かう道の途中、娘は買い物袋の上で寝てしまった。寝てしまうと買い物袋はベビーカーと違って不安定。何度も横にこぼれそうになるのを支えながら急な坂道をのぼる。途中からは階段に。いよいよ買い物袋も使えない。力が抜けてもはや肉の塊と化した娘を抱いてぜーぜー言いながら登る。いよいよ頂上にたどり着いた時には広い眺めを眺める前に地べたにへたり込んでしまった。売店でコーラを買ってがぶ飲み。本当はそこからさらにもう少し登った塩谷君お勧めの、サン・ミニアート・アル・モンテ教会からの眺めを楽しむつもりだったが、とてもそこまで行く気力が出なかった。

ミケランジェロ広場からの眺めは結局夕方に来て正解だった。夕方の光の中の街は印象的で、かつてコローが描いたフィレンツェの風景を思い起こさせる。ちょうど逆光でシルエットに浮かび上がるベッキオ橋が美しい。息子は昨日から狙っていたフィレンツェのロゴ入りの帽子を買ってもらって有頂天。ダビデ像の前でポーズをとって写真に収まりご機嫌だったが、翌日ヴェネツィアの水上バスに置き忘れて泣きべそかくことになるとは想像もしていない。ところであちこちで見かけるお土産。ローマでもあちこちの店で見たのでかなりの”売れ筋商品”らしい。「ダビデパンツ」いったい買って帰ってどれくらいの人達がはいているのだろう。
夕食は昨日美味しかったので再びYELLOWで。今日は昨日のような団体客がなくて少し余裕があったらしく、セルジョさんとも少し話ができた。塩谷君との関係を説明するのに自分が大学で講師を始めたときの生徒だ。と言ったが、どっちが生徒で先生かを理解してもらうのが大変だった。塩谷家への報告代わりに1枚一緒に写真をとってもらう。

ピッティー宮、アカデミア美術館、メヂチ家礼拝堂…、見るつもりだった所は結局見られずじまい。子連れの旅行なんてこんなもんか…。残りはまたいつかの楽しみにとっておくことにしよう。

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