絵画組成教室in Paris(その2)

(すでにこれも先週の話である。)前回の新しい試みを実際に試すにも、レンブラント展の作品は模写することもできない。そこでKay君にオイルスケッチのモデルを頼むことにし、代わりに再び技法的な事を教えてあげることにした。今回は再び下地作りの事、そしてテンペラの描き方など。
午前中、ルーブルで再び確認したいこともありレンブラントの部屋とその周辺、また、ナポレオンホールのレンブラント展を見た後、1時半の約束でアトリエに向かう。到着するとなぜかそこにはきれいな女性が二人遊びに来ている。よく見ると一人は前にモデルをしてくれていた人だった。それから一緒に食事をしようということで、ゆっくり支度を始める。彼はベジタリアンなので、肉は食べない。カボチャやら人参やらをむいて何やら野菜だけで料理を始める。なんという料理か表現は難しいが、タイ米と一緒に出てきた本日の食事は大変美味でございました。その後、ゆっくりとコーヒーを飲みながら話をし、仕事にかかったのはたぶん4時近くじゃなかったか、…とにかくそんなのんびりとしたペース。その分、残りの時間はかなりハードな内容となった。彼は結局次の模写にダビッドを選んだようですでにキャンバスを用意していた。しかも生の麻から始めるつもり。何も知らないのにキャンバス作りから始めようというあたりがすごい。自分なりにめちゃくちゃにタッカーで木枠にキャンバスを貼っている途中だったのだが、よく見ると木枠の裏側にやっている。さっそくやり直し。生麻から始めるには膠引きで縮みが来る事を考え、手で張る程度の緩さで、そして均等な力で縮み、ゆがみを出さないために布の折り目の縦横と木枠の縦横をきちっと一致させる必要があることを伝える。膠は前日に水でふやかしておくように言ったのだが、どういう訳かいきなり熱いお湯に入れたまま長時間にわたり沸騰させてしまったようで、なんだかよくわからない粘ったゼリーのような物体になっていた。

本人もこれはだめだと気付いたらしく、朝に別のものを作りなおしていてくれたので何とか作業には入ることができたが、膠がこんな物体になってしまうことがあるなど自分も初めて知った。Kay君いわく、「僕は失敗が多い分覚えるのも早いのさ。」確かにその通りかもしれない。膠をキャンバスに塗らせ、乾き待ちの間に今度は持ってきた板地にボッティチェリのビーナスのコピーを転写させる。終ったところでキャンバスの膠塗り2回目。乾かしながら、今度はテンペラのメディウム作り。質問が多いので答えるのに苦労するが、こちらにとってもいい勉強だ。できたところで絵具づくり。途中気付くとキャンバスの膠が乾いていた。ところが置いた場所が悪く、下から押されて一部ベコッと出っ張ってしまう。仕方がないので一応霧吹きで水気を与え、再度乾かして自然に張りが戻るか様子を見ることに。さらに絵の具を作っている間にいらない板を見つけ、いつかアングルの模写をやるときの参考にグリザイユから色を入れるやり方を見せてみることに。(アングルが実際そうしていたかではなく、あくまで滑らかな調子を使いながら透明感を生かして描くための方法として。)時間節約のためにアクリルジェッソを塗ってその上にアクリルでやや褐色のインプリマトゥーラ、そこに直に油絵の具を使ってモノトーンで描いて行く。バンダイクブラウンで影を入れてから明部にシルバーホワイトを入れ、ある程度諧調ができたら中間調子にやわらかい筆でなでるようにグレーの調子を入れていく。中途半端だが、感じを見せるにはそれでも仕方ないか。様子を見ながら再びテンペラへ。肌の部分に平筆でテールベルトを薄くベタ塗りし、影の調子をヴェルダッジョで入れていく。その後、白、イエローオーカー、バーミリオンで明部の描き起こし。面相筆だけで描くことにびっくりしている様子だ。ある程度効果が見え始めたところで選手交代、再び私はアングルに戻る。最後に実験中のレンブラントのメディウムを横で作って見せ、黒と赤レーキを練り、混色して塗ってみる。Kay君の描くレンブラントの牛肉の影、そして血の色に使われたグレーズの透明で分厚いテクスチャーにどうかと見せる。「これだこれだ。」彼もこのグレーズについては苦労していたようで、どうしても透明に厚く塗ろうとすると可塑性が失われデロデロになってしまうことに悩んでいたらしい。筆のせいかと豚毛の変わった筆を買い、筆跡を残そうとしていたらしいが、これでその筆も必要なくなったと悔しがる。そんなこんなで気付くともう10時。まだ辺りが明るいので気付かなかったがすっかり遅くなってしまった。その日は一つ収穫が。昼に遊びに来ていた女性二人がオイルスケッチのためのモデルをやってくれるという。これで実験の成果が多少は試せそうだ。
そうそう、出っ張ったキャンバスは無事、ピンと張っていた。

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