18日目の仕事

顔の部分へグレーズ。主に暖色系を入れていく。バーミリオン、イタリアンピンク、濃い影にはバンダイクブラウン、
寒色系には黒と白のグレー。今回はちょっと下層を暗めにしすぎたか…、明るさがちょっと鈍く感じる。しかし逆に暗い部分、髪の色や鼻の下の影、目の色などを強くすると相対的に明部がしっかり見えてきた。色はまだ浅いが、何度か重ねることで凹部も少しずつ色が入り、以前よりはしっかりしてきた。が、まだまだだ。金曜日にもう一度グレーズを重ねることにしよう。化学分析の結果では、茶系の下層描きの上にいきなりウエット・イン・ウエットで完成にもっていっているように書かれているが、果たしてそうなのだろうか。はっきりと違った色の層がある程度の厚さで重なっていればクロスセクションの画像にもはっきり表れるのかもしれないが、実際の作業というのはそれほどわかりやすいものではない。色がついているかついてないかという程度のごくごく薄い層が何層か重なっていたとしたら、それははっきりと分析結果としては出てこないのではないだろうか。しかし実際はそのような場面が多く、一見わずかな作業に見える部分が画面上で非常に大きな効果をもたらすことがかなりある。そのあたりに化学分析の限界があるように感じる。今回の顔の部分について言えば、自分のやった作業に比べればオリジナルはずっとシンプルに描かれているだろう。とはいえやはり一度で出てくる色とはどうも思えないのだ。あと残り2日。明日は顔は乾ききってないはずなので描くことはできない。果たしてどこまでやれるだろうか。
今日はなんだか変だった。「レンブラントの自画像を黙ってじっくり観る会」みたいなルーブルの企画でもあるのだろうか。10人位の人たちが、ただ黙って30分くらいレンブラントの晩年の自画像をじっと観ていた。作業をしながらなのでちゃんとはわからないが、そのあと、ルーブルの職員(案内人)のような人が、今度は解説を始めるのだが、今度はひたすら、…、たぶん1時間以上ずっとしゃべっていた。一行が去って行った後しばらくすると、またも黙ってじっと自画像を見ている(たぶん新たな)一行が現れる。いったいなんだったんだろう。あとで(たぶん)その時しゃべっていたルーブルの職員が話しかけてきた。電話番号を教えてくれないか?ということだった。一応名刺を渡したのだが、一体それがなんなのかはよくわからない。
今日はまた、先週模写の大作を仕上げたばかりの知り合いのコピーストが観に来てくれた。ルーブルでの初日に初めて会った人。60代くらいの男性。とても親しくしてくれていた。先週別れ際、いつ仕上がるんだ?と、こちらのことを気にかけたいてくれたが、搬出のばたばたできちんと挨拶もできないまま別れてしまっていた。連絡先を聞きそびれていたので書いてもらう。名前を初めて知った。Francoisさん。フランソワなんててっきり女性の名前だと思っていた。2年に一回コピースト達の展覧会がサンシュルピスのあたりであるとかで、その時には連絡すると言ってくれる。ありがたいことだ。でも帰国と同時に貧困生活が待ち構えていると思うとなかなかねえ…。現実は厳しいですよ。でも今日来てくれてありがたかった。また会いたいと思える人だ。
今日は休みかと思っていたKay君、終了間近の1時過ぎにひょっこりやってくる。先週貸していた本を返しに来たのだ。「水曜日まで貸すよ」といったのをしっかり覚えていたらしい。彼はすっかり本を読んでチェリーガムを見つけて手に入れたらしい。一部の色でメディウムの中から検出されているという記述があるのだ。大した好奇心だ。初めて油絵描く人がやることじゃない。他にも膠が検出された例もあるようだということもあり、今度パネルの白亜地の作り方を含め、教えてあげようということになった。今日はその足でボザールのデッサン会に行くという。
 今日は入れ替わり立ち替わりいろんな人が来た。最後に一人、大きな目をぱちくりさせて、「セ・ボー!」だったか「トレビヤン!」だったか、話しかけてきた人。自分もコピーストだという。興奮気味に話しながら最後には「I love Japan!」と言ってコートに隠れていたTシャツを見せる。日の丸らしき模様がチラリと見えた。ホントにいろんな人が見に来ます。
今日の息子の二言。「関取の焼き鳥」「おっかさんの落下傘」以上。

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