17日目の仕事

なんとまたしても10時まで閉まっていた。どうにもならないのでピュジェの中庭のベンチに座って落書きをしながら待つ。しばらくすると一人の監視員が近づいてきた。にこやかに英語で話しかけてくる。何かと思ったらこちらのメモ帳に単語を言ってそれを書きとめるようにと勧めているようだ。その単語でインターネットで検索するようにという。ミラクルとか何とか…。どうやら宗教の勧誘らしい。あとで家に帰って調べてみると、カトリックの神父の名前のようだ。後ほど席を立って仕事に向かう際、ふと見ると、また同じ笑顔でほかの観光客に話しかけている姿を見た。ルーブルの監視員が伝道活動…、日本ではなかなか見られない光景。
さて、今日の仕事は顔の部分、乾いた上からグレーで調子を整える作業。実際やってみるが、思ったほど凹部にきっちりグレーが入らない。もう少し半乾きになってから表面をなでたらうまい具合に効果が出るかもしれないが、3時間の中では思ったようにはなかなかいかない。画像では何も変化が見られそうにない。残る3日で何ができるか…。本当に実物は何気ない作業のように見えるのだが、実際やろうとしても一筋縄ではいかない。いずれにしても、これ以上やり直すと、マチエールがもたつくだけでいい結果は得られない。なんとかこの線で完成に持っていくつもりだ。
 模写をしていると、毎日何人かの人に話しかけられるのだが、やはりレンブラントを描いているからか、オランダの人に話しかけられることが多い。自分の国の画家を描いているのを見ると、誇らしく感じるのだろうか。こちらもなぜか本場の人に認められたような気がして悪い気はしない。
作業後はまたKay君とカフェで一杯。レンブラントの技法に関する分析結果の本を貸してあげたらすごい勢いで読んでいるようで、いろいろ質問されるが、答えるにも言葉がこんな状態では説明自体がえらい作業になる。かなり英語はできるようで、まだこちらがちゃんと読んでいない部分まで目を通しているみたいだ。そのへんは実にうらやましい。もっと英語、ちゃんとやっとけばなあ。

今日の息子の一言。「オランダのベランダ。」…さすが、ヨーロッパに住んでいるだけの事はある…、と、言うことにしておこう。

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