16日目の仕事(2度目の仕切り直し)

朝現場に行ってみる。昨日の仕事を確認する。しかし、どうにも昨日の顔の仕事がまだ納得がいかない。しばらく絵の前で悩んだ挙句、再度明部を不透明層からやり直すことにした。すでに事務所には来週の金曜には終えると申告してしまったので、残る日にちは来週の月、水、そして木曜はできるかどうかよくわからない。金曜も描くと乾かない状態での搬出になる。最大限描いても4日。少なければ2日。4日あればたぶん何とかなるとは思うが、要は日数ではなく、乾燥時間の問題。どちらにしてもこれが描き直しには最後のチャンスだ。最後に来てかなりじたばたしている状態。何事も思い通りにはいかないものだ。初めにグレーで少し暗めに色をのせる。本当はその状態で一度乾かしたいのだが、時間的に無理なので、少し硬めになったところで明部を描き起こす。今回の描き起こしはできるだけ明るくなり過ぎないように、また、ある程度の肌色調の色を出しながら。これが乾いたら月曜日にまたグレーを入れて調子を整え、水曜日に暖色を入れる段取りだが、実際どうなるかはやってみないとわからない。

昨日休んだKay君は、ちゃんとサンシックンドオイルで練ったシルバーホワイトを持ってきた。今度はきちんと練られているようだ。卵黄とシッカチーフ代わりのブラックオイルを数滴加えてちょうど良さそうな絵の具の作り方を教えてあげる。本人も今度はかなり使いやすそうで、この先、市販のサンシックンドオイルを買えば同じようにできるのかと聞いてくる。とりあえずは分けてあげたのを使って、なくなったら市販のを使えばいいと伝えた。
今日は家族が見に来た。子供たちは最初は興味しんしんで見ていたが、そのうち飽きてベンチで折り紙を始める。

なんだかレンブラントの部屋だけまったりした自分のうちみたいな状態、そのうち子連れのお母さんも来たりするものだから幼稚園状態。おかげで今日は、あまりお客に話しかけられることもなかった。Kay君に家族を紹介するのに、「うちではみんな君の事を「レンブラント君?ムッシュー レンブラント?と呼んでいるんだよ。」というと、彼は「とんでもない。僕はmonsieur boef(ムッシュー牛肉)ですよ。」…だそうだ。うまいことを言う。これからはそう呼ぶことにしようか。

仕事が終わって外に出ると、パレ・ロワイヤルの前の広場で弦楽器のモーツァルトの演奏をしている集団がいた。周りに人だかりができている。演奏している人達を見ると、若い人が多い。音大の学生達なのか。重厚な建築物に囲まれ、その石造りの建物のエコーの効果にも助けられながら、颯爽と見事な演奏をしている姿はさすがに絵になる。なかなか日本ではお目に描かれない光景。そう言えば今日はオペラ座の前でもブラスバンドが威勢のいい演奏をしてたっけ。一瞬、ここは甲子園だったっけ?と思うような…。地下鉄内で1日1度はお目にかかるアコーデオンやギター、中にはトランペット、アフリカの太鼓まで…、の演奏者達の音楽といい、確かにここは音楽、美術といった芸術が特別なものとしてだけではなく、実に身近なものとして当たり前にあふれている。そこは残念ながらちょっとうらやましいところだ。

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