15日目の仕事

昨日乾いていなかった顔の部分も今日はしっかり乾いていた。顔を中心にグレーズをしていく。まず全体にごく薄く黒にわずかの白を混ぜたグレーをかける。あとはひたすらウエット・イン・ウエットで描き進める。これは少し全体の明度を落とすためと、いきなりバーミリオンだと原画より色が強く出過ぎるため。使用した色はシルバーホワイト、バーミリオン、イエローオーカー、アイボリーブラック。前回の経験から、アズライトの使用はやめることにした。前回彩色した時よりは慣れたせいもあり少しはいい。とはいえ、やはり原画の強さにはまだ到底及ばない。特に明部の輝くような感じが今一つ弱い。そこで、前述の色にもう一つイタリアンピンク(黄色のレーキ)を加えてみることにした。これは、ナショナルギャラリーの分析結果にも書かれていたもので、(同時期に描かれた肖像画、Philips Lucaszの肖像)黄色のレーキと聞いて始めは強すぎて使いづらそうに感じ、ピンときていなかったのだが、試しに使ってみた。筆先にごくごくわずかのイタリアンピンクをつけ、ハイライト部分を中心に、すでに塗られている絵の具を半分こすり取るようにしながら明るさを出しつつ色をぼかし込んでいく。悪くはなさそうだ。実際の色はたぶん経年変化の黄ばみの色が入っているだろうから、必ずしもこの黄色レーキで出た色が完成当時の色だとは思わないが、少なくともこれを使う前よりはずっと色に深みは出たようだ。ところでこうしてできた状態を原画と比べてみると、ある違いに気がついた。明部の盛り上げ部分の凹部に入り込んだ絵の具の色は基本的に原画を見るとグレーだ。

これが明部の物質感を強めて立体感と明るさを演出しているのだが、模写のほうを見ると、頬の赤味の部分などはバーミリオンが入るので、当然凹部に入るのも赤味の色となる。と言うことは、手順が実際と多少違う可能性がある。一つの可能性としては、下層描きの段階が、最初は実際より一段暗めのグレーで描かれており、その上に明るい色で描き起こす際、下のグレーを透かして見せることにより凹部がグレーに見えている場合。もうひとつの可能性は、初めにかなり明るめに描き起こしておいてから、明度調節のためグレーで押さえてある場合。いずれにしても下層の段階である程度肌の色に近づけておいてグレーズは凹部にたっぷり色がたまるほどにはかけていないのかもしれない。むしろ暖かめに描いておいてグレーで赤味を抑えながら色と調子を深めているくらいに考えたほうが合理的かもしれない。

ところで今使っているメディウムだが、基本的にはサンシックンドリンシード。シルバーホワイトに卵黄を添加すると乾燥が遅れる傾向があることが分かってから、そこにごく少量のブラックオイルを添加したものを使っている。グラッシをする場合、絵の具の量が僅かなため、相対的にブラックオイルの比率が高まるためか、今日、3時間半ほどの作業時間の中、終わりのころにはすでに絵の具が動かしにくくなるほどに固まりつつあった。もう少し乾燥が遅くてもよさそうだ。サンシックンドオイルだけでもいいかもしれない。

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