綱渡りと肩透かし

今日はいよいよルーブルに手続きに行く日。「手続きに入って」ではない。「手続きに入る」までにすでに1カ月が過ぎようとしている。こんなこと、なかなか日本では経験できたことではない。3時過ぎに、先日ルーブルで模写をしていた韓国人、チャンさんが一緒に行ってくれることになっていた。ありがたい話。とにかく今の段階で揃えられるものはすべてそろえた。模写したい作品の下地まですべて終わっている。あとはとにかく許可が早く下りることを願うだけだ。朝、家に電話が入る。ボザールで会ったHさんからだ。模写申請に関してピンカス教授が推薦状を書いてくださるという話だった。またまたありがたい話。ルーブルの約束が3時過ぎ。ボザールのピンカス教授の授業時間が2時からなのでそちらに寄ってからでも何とか間に合う。まさに綱渡りだ。2時ちょっとすぎにアトリエに向かう。久しぶりの教室。懐かしい顔がちらほら見える。教室の片隅の準備室に入ると、一人の男子学生を呼び、(残念。名前を聞けなかった。)教授が口頭でいうことを書き取らせる。いくつか手直しをして、内容をHさんが訳して聞かせてくれる。学生に正式の紙に清書させ、最後に自らのサインを入れる。これを持っていく前に控えのコピーを取っておいたほうがいいと、別の学生を呼ぶ。以前授業中に歌を披露してくれていた中国系の女学生、クリステルさん。彼女に連れられて大学の事務室のようなところに行き、コピーを取ってもらう。…ここでの学生と先生の関係を見ると日本の場合より上下関係がしっかりしているように見える。もちろん日本の学生も頼めばちゃんとやってくれるはずだが、たぶんこのような雑用を日本ではあまり学生には頼まないのではないか。学生のほうも、慣れているようで、当たり前のようにてきぱきと働くので見ていて気持ちがいい。クリステルさんにお礼を言いボザールを後にしたのが2時40分ころ、大学前の道沿いに画廊の様子を眺めながらいよいよ本番に向かう。
3時15分にルーブルのインフォメーション前で待ち合わせる。因縁の(?)インフォメーションの”目の前”にある入り口から中へ入る。(写真はインフォメーション越しに撮った模写事務所がある場所への入り口。奥にあるのがそう。)入って階段を上がると、いくつかのイーゼルが見える。
その一角が目的の部屋。ところが、いつもは並んでいるはずの人がいない。チャンさんがノックして中の人に聞いてみると、今日は担当の人が来ていないという。…またもやの肩透かし。到着して1分での修了。始めて1カ月、いまだ申請に入れず。これがうわさのフランスなのだ。聞いてはいたものの、本当に現実なんだなあ。すごいのは担当者の部屋にいる人が、いつ来たら会えるのかを全く教えてくれないこと。いるときに来いということらしい。本当に知らないのか人の事には係わりたくないだけなのか、新参者の日本人には到底わからない。チャンさんもすまなそうでかえってこちらが恐縮してしまうほど。あとで担当者に電話とメールで問い合わせておいてくれるということだが、もちろん電話もメールもほとんど応答がないことは、彼女自身もよく知っている。今は待つしかなさそうだ。
こちらに来て3ヵ月半、最初と比べて事件も減り、落ち着いてきたかと思っていたが、ここにきてまた次々といろんな事が起こり始めている。
それにしても、今日一日だけでどれだけの人に助けられたのだろう。Hさん、ピンカス教授、男子学生、、クリステルさん、そしてチャンさん。毎日恩人ばかりどんどん増えていく中、事態だけは一向に進まないところがまたすごい。いや、思った以上に手ごわいです。

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