手続き(その3)…偶然というには…

妻からの情報。娘の通う幼稚園に、ご主人がフランス人の画家でルーブル関係で働いている、というお母さんがいる。…最近ヨガやベジタリアンに興味を持ち始めた妻が、そんな関係からたまたま知り合うことになった人。なんという「偶然」。その人からの話によると、今は、クリスマスバカンスの時期で、いろんなところが休みになっていて、調べること自体が難しい状況だが、まだ未確認の情報として、模写申請には時期があり、すでに9月にその時期が過ぎている可能性がある。しかし、9月に来て1年しかいられないという特殊な事情もあるようだし、しかるべきところの推薦状なり紹介状なりを持って説明すれば、まだ可能性もあるのでは。とのこと。とにかくその線であたってみるしかなさそうだ。まずはとにかく日本大使館にメールをうってその趣旨を説明し、何らかの書類を出してもらえないかと問い合わせてみる。ところが翌日電話してみると、すでに担当者はバカンスに入っており、次に来るのは1月10日過ぎという。その間の代りの人はいないのかと聞くと、そのほかもみな年末に向けて次々バカンスに入るため、対応できる状態にないとのこと。…ここでもバカンスの壁が。もしやと思い日本の文化庁にも問い合わせるが、こちらも前向きな返答はなし。とにかく今ある大使館の書類と文化庁の研修員としての証明書で何とか進めるしかなさそうだ。しかし、いまだ模写事務所の電話も通じず、場所すら分からない状態ではもがいてみるにももがきようがない。先日インフォメーションの人が言った、「申請する人がとても多い。」という言葉も気になる。申請する人が多くて許可が下りるまで何カ月もかかるようでは時間切れになってしまう可能性だってある。これは実際現場で模写をしている人を捕まえて直接聞いてみるしかない。言葉がわからずにどこまで聞き出せるかはわからないがとにかくやってみようと出かけたのが水曜日。
幸いその日は模写をしている人がかなり多くいた。しかし、今日は客の数もかなり多く、メインの部屋で描いている人など、ゆっくり話ができるような雰囲気ではない。仕方なく人が混んでいないところを探す。果たしてそんなところに描いてる人はいるのだろうか。レンブラントの部屋を2部屋ほど過ぎたところに、一人の東洋人の女性が描いているのを発見した。幸いこのあたりはかなり人の行き来が少ない。もしかしたら日本人かもしれない。それとも韓国人?中国人?思いきって話しかけてみる。「日本人の方ですか?」通じないようだ。そこで、「ハングクサラミエヨ?(韓国人ですか?)」と聞いてみる。大当たり。今まで模写をしている東洋人を見たことはなかったのに今日に限って、しかも韓国人。なんという「偶然」。さっそくいろいろ聞いてみた。それによると、申請は、毎週木曜日だけ担当の人が来るようで、電話はほとんどつながらない。その日に直接必要な資料を持って申請に行けばよい。何度か模写をしている人は比較的早めに許可が下りるようだが、初めての人はなかなか難しい。(その人は9月に申請してやっと最近許可が下りたらしい。)…申請場所についても教えてもらった。確認しに行ってみると、なんとその入口はインフォメーションの目の前だった。これだけ何度も通ったインフォメーションで教えてもらえなかった申請場所の入り口…。「別の場所にある。」どころの話じゃない。開いた口がふさがらないとはこのことだ。翌日にはにはさらに驚くべき事実。担当者がすでにバカンスに入っているという情報もでたらめだった。その韓国人女性からのメールでその日のうちに担当者がいるのを見たとの知らせが入ったのだ。木曜日当日の連絡。残念ながら準備が間に合わず、断念。当然次の木曜は年末で無理、結局来年に持ち越しとなった。とにかく何かを進めようとするととてつもない手間と時間がかかるのがここでは当たり前の事らしい。とはいえ一歩前進だ。話はちょっとずれるのだが、この日(水曜日)はもう一人、韓国人に助けられた。BHVという日本でいうと東急ハンズのような何でも売っている百貨店で安い万年筆を買った。ついてるインクが青だったので、他の色はないかとインクのコーナーへ行き、セピア調のインクを買った。店を出て、カフェに入って一服。さっそく書いてみようとインクを入れてみた。ところがサイズが合わない。どうやら2種類あるインクのうち、大きめのを買ってしまったようだ。仕方なくまた売り場に戻って交換してもらえるか聞いてみる。店員によると、一旦領収書を見せて代金を払い戻してもらえば良いとのことで、その場所まで連れて行ってくれた。さていざ順番が来てみると、これではだめだという。さっぱりわけがわからずお手上げ状態。そんなときふと横を見ると、目の前たった1メートルのところに見たことのある顔が。近所の韓国人教会で顔見知りの韓国人学生だった。なんでも教会の聖歌隊のためのファイルを探しに来たのだという。さっそく彼に頼んで通訳してもらい、もう一度売り場へ。そこで書類を書いてもらい無事払い戻しに成功した。たった200円程度の事での大騒ぎ。それにしても広いパリの中、たまたま困ってしまったその場所で、半径1メートル以内に数少ない知り合いがたまたまいる確率って一体…。なんという「偶然」。1日のうちに2人の韓国人にここぞという場面で助けられた。まさか、パリまで来てこんなに韓国語が役に立つとは。つくづく「韓国語をやっといてよかった…もしかして、この日のために韓国語をやってたのかしら…。」なんて思うほどの一日だった。
実はその「偶然」はまだ続く。次の日曜日、韓国人教会へ。年末だからかいつもより少し人もまばら、特に意味もなくいつも座る側とは反対側の席に着く。礼拝が終わり、皆が席を立ち始めるころにちょうど前の席に座っている人が振り返り、目が合う。「あっ…!!」なんとその人こそ、ルーブルで会った韓国人女性だった。「偶然」も、ここまで続くと…。

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