敵は移民局(OFII)にあらず

今日、ついに移民局に行った。滞在許可証をとるために。この滞在許可証は入国後3カ月以内にとらなくてはならないもので、とれなければ不法滞在者となってしまう。この手続きについては一部の人たちの間では「フランスの洗礼」とも言われているそうで、とにかく大変な”儀式”なのだと聞かされている。ここにいる人、誰に聞いてもいいことを言う人はいない。来る前からとにかく大変だ大変だと聞かされ続けてきた。冬の寒い中、赤ん坊を抱いたまま寒い外で何時間も待たされた話。担当者によって言うことが全く違い、前回いいと言われたことにしたがっていくと次にはだめだと言われ又出直し。そのための予約を取るための予約に行ったとか、フランス語がわからないことに対してキレられたとか、あそこでは自分達は動物か、モノ扱いだとか、あまりの扱いのひどさにそこにいた人たちが抗議したところいきなり門を閉められてしまったとか…。とにかく凄いらしい。そんなわけで前の日は遅くまで電子辞書を片手に妻と考えられる質問と答えを書き出したり、受験生の心境だった。当日はそんな我々のことを心配してくれた在仏の韓国人、キムさんが応援に駆け付けてくださることになっていた。なんと心強いことか。実は、他にも一つだけ安心材料があった。今年からこちらの制度が変わったのだ。去年まではビザは3カ月しかとれず、こちらで滞在許可証とともにビザの切り替えをしなければならなかった。ところが今年からはビザ自体はいきなり1年分日本で取れてしまい、こちらでは滞在許可証の手続きのみとなったのだ。なので、以前こちらに3年住んでいた、現在日本にいる鞄デザイナーKさんによると、日本での手続きが大変になった分ずいぶん楽になったみたいですね。とのこと。以前は何度も通わなければならなかったようだが、今回はただこちらについてから書類を郵送し、その後「OFII」からの知らせを待って、決められた日に必要なものを持って出頭するという形になっていた。
とはいえ、悪評高い滞在許可証申請、そう簡単にはいくまいとまずは万が一を考え早めに家を出た。30分前には着かなくてはと思っていたが、1時間前には着いてしまった。確かに愛相のよくなさそうな受付の人。しかし書類を見せると問題なく待合室に通してくれる。快適とは言えないが、外ではない。まずは一安心。1時間そこで待たされたがもともと1時間早く着いたのだからそれは仕方ない。ちょうど1時間後の3時半ぴったりに呼び出される。ちょっと驚く。するとまずは健康診断。待合室に座って待つと、しばらくして名前が呼ばれる。白衣を着た60代くらいのマダム。パスポートと言われ差し出すと、にっこり笑って「ありがとう。」日本語だ。ついでに妻があとからついてきて一緒に見せると今度は「カムサハムニダ。」なんだか聞いてた話とずいぶん違う。次々と体重、身長測定、視力検査、(数字を読まされ、「フォー。ドゥー。ファイブ。えーと、ユイット。…」英語だかフランス語だかめちゃくちゃに答える。)レントゲン、問診。やっぱりフランスらしくさっさとは進まないものの、外国人に慣れているからだろう、英語、フランス語、(中には日本語ができる人も。)身振り手振りで、きちんと対応してくれる。約1時間で終了。今度はそれを持って手続きへ。特に待つわけでもなくすぐに呼ばれる。それほど堅苦しい感じではない。ここで一つ問題が。申請にあたって、収入印紙を買っておく必要があったのだが、買ってなかった。たばこ屋さんで売っていると聞いていたのだが、近所のタバコ屋さんにはなかった。キムさんの話では、たいがい移民局の中で売っているか、その近所のタバコ屋さんに行けば売っているとのことだったので買っていなかったのだ。ここで、キムさんが助けてくれた。係の人に売っている場所を聞いてくれる。中にはないようだ。近所のタバコ屋さんにあると言う。そこで、まずは妻と子供を残して買いに行くことになった。道1本行った右側にあるはずが、なかなか見えてこない。結局500メートル以上行っただろうか、タバコ屋さんが見えてきた。さっそくキムさんが説明してくれる。ところが、何やらもめている。聞いてみると、現金じゃないとだめだということだ。こちらでは一般的に現金はそれほど持ち歩かない。スーパーでの買い物でもほとんどの人はカード(こちらでは主にカルトブルーという、銀行のキャッシュカードとビザカードなどのクレジットカードが一緒になったもの。)を使う。で、この店にもそれ用の読み取り機がちゃんとあるにもかかわらず、現金じゃないとだめだと言って、完全に取り合ってくれない。見るからに態度も横柄だ。仕方ないので近所の銀行で現金を下ろしに行く。といってもその銀行はほとんど移民局の隣にあったのでまた400メートルほど戻るはめに。キムさんはまだ怒りがおさまらない様子だ。「私もフランスに来てこんな人は初めてですよ。」たぶんここにしか売ってるところがないのでいろんな外国人が買いに来るから、態度がでかくなっているようだ。おそらくは現金で払わせて税金をごまかしてるんじゃないかとのこと。思わぬところに敵は潜んでいるものだ。敵は、移民局ではなくて、近所のタバコ屋さんだった…。結局行ったり来たりの2キロ近い買い物になってしまったが、なんとか間に合い、無事、その場で滞在許可証を発行してもらうことができた。(許可証は、1ヶ月後くらいにもう一度取りに来なくてはならないなんて事も聞いていたのだが。)本当にキムさんがいてくださらなかったらどうなったことか。また一人、こちらに恩人が増えた。夕方も5時半過ぎ。見るともう周りには自分たち以外だーれもいなくなっていた。最後に帰り際、職員らしき人に声をかけられた。なんだか分からずに答えられなかったが、あとでキムさんに聞くと、「もう誰もいないのに、今までどこで何やってたの?」ということらしい。なんだかんだ言ってフランス人、言うことは結構きついみたいだ。言葉が通じないのは、ひょっとしていい時もあるのかもしれない。何言われてもわかんないもんな。
移民局前。出てきた時にはこんなに暗くなっていた。

追伸: 先日現地幼稚園デビューに見事な勝利を収めた娘だが、わずか1週間目にして戦意喪失。完敗を喫している。やはり言葉の壁、文化の壁は、ちびっこにとっても厚いようだ。

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