朝の訪問者 その2

日曜の朝8時過ぎ、遅い朝ごはんを食べていると玄関のベルが「ジリリーン!」と鳴る。(ピンポーンなどという優しい音ではない。)何事かと恐る恐る見てみると、ご婦人が二人立っている。よくよく見るとそのうち一人は見たことがある顔。そう、数日前騒音の件でうちの台所の窓越しに話したお隣さんだ。今日は一体何事だろう。よく見るとなんだか困っているような顔。先日のいら立った表情とはちょっと違うようだ。もう一人は友達らしい。何か鍵を示して訴えている。うちのキッチンのほうを指差す。どうやらうちに入りたいようだ。明らかに知っている顔だし、怪しい人ではなさそうなので思い切ってどうぞお入りくださいと言ってみる。やはりすまなそうな顔をしてキッチンへ向かう。まっすぐ窓のほうへ。窓を開ける。窓辺の机に上ってもいいかという。OKと答える。何となく事情がわかってきた。でもまさかそんなことは…、と思う間にご婦人はそのまさかをやってのけた。「アトンシオン!!」友人の声も聞かずに一気に窓枠に上り自分のうちの窓を開け、そのま身を乗り出して(うちは日本で言う3階です。)窓伝いに自分の家に入って行ったのだ。「ダイ・ハードか!」

要はこういうこと。自分のうちのカギを持たないまま外へ出てしまい、入れなくなった。我が家とは隣合わせだが、入口が違う。入口が違うと中には入れない。そこで我が家と同じ入口の知り合いに頼んで一緒に来てもらい、うちの窓から自分のうちの窓へ入ろうとした。なかなか日本にいたらお目にかかれない事態。ほんと、映画か漫画みたいなことがただうちの中にいるだけで展開するのだからここフランスは侮れない。とにかくうちの台所の窓は、朝の訪問者に優しいらしい。我が家の第2の玄関。次に入るのはもしかして泥棒さんか。

昼近くにパリのリュクサンブール公園へ。そこでパリ在住の画家、Sさんに会うことになっていた。なぜ、リュクサンブール公園か。実はSさん、画家であると同時に格闘家。毎週そこで格闘技を教えているのだ。こちらではかなりの著名な格闘家のようで、本人いわく、絵描きとしてより格闘家としてのほうが名前が知られているようでちょっと困ったもんだ。とのこと。実はこのSさんこそ今回のフランス滞在の最大の恩人の一人なのだ。Sさんとは、昔1度だけ、同じ展覧会に出品したことはあるのだが、一度も直接会ったことはなかった。今回渡仏に際して受け入れ先の学校とのやり取りや、住むべき住宅のことで現地の知り合いもなく、日本にいながらどうにもならないまま困っていたとき、画廊の紹介でコンタクトをとりつけた。その後、会ったこともない者のために学校との交渉から物件探し、代理人としての交渉まで一手に引き受けてくださり、何とかビザ申請まで漕ぎつけることができたのだ。そんなSさんにようやく挨拶をしに行けることになったという訳。リュクサンブール公園はかなりの人出。例によってみんなこぞって陽にあたっている。そんな一角に何やら太極拳をやっている団体やら一人黙々と型を演じている人、ここは中国か。と思うほどの光景。そんな中に初めて見るSさんの姿はあった。すでに稽古は終わってしまっているようだがそれでも何人かが熱心に稽古をしている。聞けばかなりの実力者がいるらしい。日本で合気道を始めたばかりの息子にSさん、技を披露してくれた。素早い動きに息子、すっかりビビる。パリ、ほんとにいろんな種類の人がいる街だ。みんな、濃い。

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