アトリエ

毎日やることに追われてまだ制作には入れない。ちっちゃな手続き一つも言葉が通じないと大仕事になる。おまけにこちらは何をするにも必要な書類が山ほど。しかもなかなか進まない。とはいえ、今日は初めて学校で絵を描いた。人物のクロッキー。古いところなのでどんな雰囲気なのかと興味もあった。なるほど歴史を感じたのは入り口から奥に続く廊下の一部に数段の階段があるのだが石の階段にも関わらず中央がすり減ってかなりへこんでつるつるに光っている。表からみると普通のパリの建物なので一体ここのどこにアトリエがあるのかと想像できない。でも入ってみて納得できる。奥に深いのだ。さらに中庭のようなものがあってそこから採光できるようになっている。京都の町屋の構造とちょっと似たところがあるかもしれない。窓自体は片側の壁ほぼ一面。天井までの高さとさらに天井の一部。中庭なので直射日光は入らないし、天井の一部までが窓なので、今日は曇っていたが明るさは充分だった。アトリエの広さとしてはそれほど広くはない。しかし天井は高い。ノブがとれかけたドア、ほとんど朽ちかけて見えるストーブ、絵の具の付いた木製の椅子たちは多分日本の骨董屋でも高く売れるだろう。アトリエそのものがすでに骨董品。午後はデッサンのクラスなのでそれ用にモデル台を囲んで前、中間、後ろのほうに高さを変えて柵が設けられている。この柵にスケッチブックを立てかけるという仕組み。教室の後ろが窓なのだが、そこは一段高くなっていて、人が多い時にはそこにも人が乗って描けるようになっている。椅子も30センチほどの低いものから70センチ近い高いものまでそろっている。なかなか合理的なつくりだ。モデル台の背景は白い壁ではなく、カーテンレールのようなものがあり何種類かの柄のカーテンがかかっている。多少雑多な感じではあるが、人体のハイライト部分はよく見える。

時間になるとモデルが入ってくるのだが、特に更衣室のようなものはない。モデル台の横に簡単なついたてがあるだけ。モデルがポーズ時間について尋ねると知っている人が教える。最初は45分ポーズ。驚くことに本当に45分休憩なしだ。もちろん単純に日本人と西洋人という風に簡単に比較はできないが、今日の人を見る限り、やはり骨格、筋肉ともにかなりしっかりしている。描きごたえがある。しかもポーズもダイナミックだ。動きのあるポーズのため、完全にピタッと動かないというわけにはいかないが、ポーズ中に多少形が変わったとしても、描く側にしてみればありがたい。たまたま今日、後から入ってきたMさんによると、今日のモデルさんはかなりいいとのこと。みんながみんなこうというわけではなさそうだ。3ポーズ目までは少しずつ時間が短くなりながらも比較的長めのポーズ、残りの2ポーズは5分×4といういきなりの短いポーズ。ポーズの時間を計るのにタイマーは使わない。学生の中に一人係りがいるのだろうか、時間になったら知らせてくれる。5分ポーズのときは、5分ごとに「ションジェ。(チェンジ)」の声。耳に心地いい。ポーズの合間には結構なんか食べている人がいる。モデルさんはバゲットと1個のリンゴ。なかなか粋ですね。久しぶりに学生に戻った気分。これも悪くない。

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