ドローイング。(Drawings …When I was student…)

先日うちの倉庫をあさっていたら昔のスケッチブックが山ほど出てきた。中学生のころに始まって大学卒業に至る15年程度の足取りを今さらながら客観的にたどるようでなんとも懐かしいようなじれったいような、変な感じ・・・。ここでそれを公開するのもどうかと思うけど、これから美大を目指すような若者の参考にでもなればと、一部見せてみようかな、と、思う。最近ブログ書く暇もネタも無かったので・・・。

さて始めに中学校時代のスケッチブックから。

13 years old… Junior high school first grader

13歳の時に描いた猫。当時祖母が飼っていた猫で、いつも食事時には私の膝に乗っていたような家族みたいな猫だった。確かこの絵は彼女のおきまりの席、押し入れの上の段にに座っているのを椅子に登ってスケッチブックを立てかけ、描いたように記憶している。

同じ頃に描いた幾何形体・・・。たぶんその頃、光でものが立体的に見えるのに興味を持ち始め、想像で描いてみようとやってみたもの・・・だと思う。

中2のころに描いた庭のヤツデ。たしか学校の美術の時間に版画でドライポイントをやった時の下絵だったかな?

次に高校時代。16~18 years old… Around the time of high school student

高1のころから美大行きを夢見だした。たぶんそれもあって、自分の手足やら静物やら石膏デッサンを描いてみようと思い立ったのかな?レンブラントの光の表現にあこがれて暗くした部屋の机にライトをつけて描いたデッサン、これは油絵のためのエスキースだ。

18 years old…  High school third grader

高3になると本格的に予備校に毎日通うようになった。横浜の高校の授業が終わるとそのまま電車で40分ほどかけて当時自由が丘にあった東横美術研究所に通っていた。毎日家に帰るのは10時過ぎ。電車に乗っている時間を有効に使おうとふと思い立ち、車内スケッチを始めた。電車の中で描くのは今考えるとものを捉える訓練としては意外に効果的なものだったようにも思う。モデルはいつ動くかも、いつ降りてしまうかもわからないので、瞬時に対象の特徴を目に焼き付けるようになる。揺れる車内では思うような線が引きにくく、ゆっくり慎重な線を描くには向かない。自然とスピード感のある線を引ききるようになる。5月頃に始めたと思うが、初めはびびりながらで自信なさげな線でちまちま描いていたものが、9月ころになるとかなりのびのび描けるようになってきているのがわかってもらえるかも知れない。そのうち筆ペンで描いてみたり、いろいろ試し始める。当時はとにかく毎日必ず何枚か描くことに決めていて、休みの日には自分の手を描いてみたり、苦手なガラスを描きながらいらついてみたり、高校のテスト期間中には新聞のスポーツ欄の写真を見て選手を描いたり、画集を見ながら巨匠達の絵を模写したりしながら「早くテストが終わって電車で描きたい!」なんて書込みがあったりする。80ページのスケッチブックの裏表に描いたクロッキー、大体1,2ヶ月で1冊くらいのペースだったろうか・・・。

その頃のスケッチブックにいくつか油絵が挟まっていた。ペーパーパレットに描いた絵。きっかけは予備校で人物油彩を描いていた時。モデルの休憩時間にふと思い立って描きたくなり、とりあえずそこにあったペーパーパレットに直に描いてみたのだ。休憩時間だからたぶん5分程度。その時の感覚が妙に新鮮で、その後、数枚、今度はポーズ中に描いた。なのでここに描かれた人物画は20分で描いたもの。その時はキャンバスに時間をかけて描くものは描くほどににぶく、濁っていくのに、こいつはなんで新鮮さを保って描けるんだ?・・・と不思議で仕方なく、謎だった。今ではその理由がはっきりわかるのだが・・・。今思うとここ数年取り組んでいるオイルスケッチの原型はすでにここにあったようだ。

21 years old…  Third grader of Musashino Art University

大学に入ってしばらく、3年の終わりに友人達と3人で数ヶ月ヨーロッパを旅した。行く先もその日その日で決めるような気楽な旅。行く先で見つけた風景を水彩で描く傍ら、相も変わらず電車の中で乗客を描き続けていた。こちらから頼んで描かせてもらうことも、また反対に描いてくれと頼まれて描くこともあった。そこから生まれた友達のうちには今でも連絡を取り続けている人もいる。はっきりわかったのは、ヨーロッパで生まれた西洋画は西洋人の顔を描くのに適しているという当然とも言えること。平面的で眉や髪の色の濃い東洋人が線的要素が強いのに対し、目鼻立ちが立体的で、毛髪の薄い西洋人の顔は輪郭線よりも陰影が強く見える。深い明暗描写に向く油絵の具が生まれた素地はその顔を見ただけでもわかるように思えたのだ。

同じ頃、木炭でドローイングした家族の肖像。考えてみたら両親は今の自分より若いんだな。

24 years old…  First grader of Musashino Art University graduate school

大学院に入り、ちょっとした行き詰まりにぶち当たった。自分の絵に絵画としての骨格が足りないと思い始めた。ただそれらしいモチーフを並べてなんとなく描写していくのではなく、意識的に画面を組み立てていく骨格を持つ必要がある。たぶん自分に描欠けているのは平面としての絵画の意識なんだろうと漠然と考えたのだろうと思う。何をやったかと言えば、本能的に手を動かしてみること。夜寝るときに枕元にスケッチブックと水彩絵の具、クレヨンなどを置いておき、翌朝、目覚めると同時に寝ぼけたまんま、何でもいいから描き殴ってみるということ。ただ動くままに線を引いたり色を塗りたくったり。極力意図的なことはしないようにしていても、そのうちどこかでバランスをとったり形に結びつけたりしてしまう。それはそれで一つの反応として流れるままにやってみた。・・・結果として何か新しいものが見えたかと言えばはなはだ疑問だが、そんなあがき方もある。無意識に、と思いつつもなんだかんだにじみ出てきちゃったものは、色面の意識。この色面の面積と、その色面の形、明色と暗色をぶつけたり馴染ませたり、それが心地よいリズムを生むかどうかが自分の関心事だと言うこと、それは確実に現在の自信の作画法に結びついているように思う。

Around mid 20’s

大学卒業後しばらく予備校で教えていた。その頃のスケッチブックには教えるために描いたデッサンや、学生達が描いてる姿を描いているもの、後は近所の風景なんか・・・。

Recent drawings

最後にいくつかここ数年のものでも。カルチャーのデッサン教室で生徒さんに教えながらちょこっと描いた石膏デッサン、ヨーロッパで描いてきたクロッキー、などなど・・・。

人ってこんな感じに上達していくんだと思っていただけたか、それとも年をとっても大して変わんないもんだと思ったか・・・、それは貴方の見方次第!

2件のコメント

  1. yamada
    2018-04-01

    自分が今、美大を目指しているということもあり、とても参考になりました。先日、ペーパーパレットに油絵を描いていて、なぜペーパーパレットで上手く表現できることがキャンバスでは出来ないのかと私も疑問に思いました。その理由が気になっていたので、少しでも教えて頂けると幸いです。

    返信
    1. osamuobi
      2018-04-01

      美術を目指す学生さんの参考になればと思っていたので、うれしくコメント拝見しました。
      同じようなことを感じながら描いているのですね。なぜ、ペーパーパレットでうまくいくのにキャンバス上ではそう行かないのか・・・。簡単に言葉で説明するのは難しいのですが、いくつかヒントになることは言えるかも知れません。
      一つ目は発色の問題。油絵の具は非常に透明性の高い絵具です。ちょっと乱暴な言い方をすれば、単純に言って、下地の白さが透けて生きている状態が最も絵具の発色が良いのですが、キャンバスの上で一生懸命描き込もうとすればするほど画面上でいろんな色が混ざり込みながら不透明で表情のない濁り色になっていきます。パレットに描くときはおそらく短時間で一気に描き進めようとするため、特に陰影部に白を混ぜないような透明感のある絵具で迷い無く描けるため、発色の良い状態を維持しやすいのです。もう一つは画面のテクスチャーの問題。一般のキャンバスは麻目がかなりはっきりしています。不透明似絵具をのせる場合には引っかかりがいいのですが、透明感のある絵具を使う場合、キャンバスの凹凸のため、輝きのある発色の邪魔をします。パレットはかなり表面が平滑ですでに艶のある状態なので、一筆入れただけで張りのある絵具ののりをしてくれるのです。
      だからといってペーパーパレット上で作品を作ると言うことは保存上も後々問題も出てきますから勧められることではありません。ではどうしたらより自分に合った心地よい画面で制作できるのか。それはいずれ貴方が武蔵美に入学してきたときに、じっくり学ぶことができるでしょう。それができるに充分な施設と授業が準備されています。今はその日を夢見ながら、不自由な中にも貴方なりの試行錯誤をしながら回答を模索してください。その努力はきっと貴方の財産になります。

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