第2回ホキ美術館大賞展

 先日ブログで書いた現在開催中の展覧会、「スモールコレクション」展。しかし現在ホキ美術館で開催中のメインの企画展は「第2回ホキ美術館大賞展」だと言うことはご存じだろうか。これは40歳以下の若手の写実作家を対象に、ホキ美術館が次世代の写実作家の養成、発掘を目的としたコンクールで、今回が2回目となる。今回はホキ美術館アートスクールで教えた若者達も出品していることもあっていったい彼らがどんな成長を遂げているのか興味もあり、是非行かなければと思いつつ、気付くと半年間もある会期ももう残りわずか。今行かなければ見落とすことになってしまうと、先週やっと足を運ぶことができた。率直な感想を言えば、予想以上に質の高い展覧会になっていると言うこと。前回、第1回目とは明らかに質の高さが違う。そして何よりうれしかったのはアートスクール生達がかなりいい作品を出してくれていたことだ。勿論彼ら、彼女らはもともとあちこちですでに活躍している力のある作家達ではあったが、そんな中でもそれぞれのベストを尽くしてくれたのが伝わってきてうれしかった。

大賞を受賞したのもそんな中の一人、先日ホキ美術館名品展で佐賀に行ったときにも会ったばかりの鶴友那さん。水面に横たわる女性像はジョン・エヴァレット・ミレーの有名な1枚、オフィーリアを思い起こさせるが、おそらく彼女は意識的にそれを引用しているのだろう。流れる水と水しぶきのきらめき、どこまでも気を抜くことなく描ききろうとする姿勢が伝わってくる。ハイライトの白のマチエールが、ものを描くための必然から出たものというより、やや機械的なパターンに見えること、そうしたある種工芸的な背景に対し、肝心な人物描写が弱いというのが佐賀勢全体にも言える弱点ではあるが、今回の彼女の作品は他に比べて引けをとらないだけの堂々とした強さを持っていることは確かだと思う。この先、彼女のもともとの持ち味でもある幻想的な雰囲気や装飾性と、リアリティーのある描写との折り合いをどうつけていくのだろうか。互いが相殺することなく相乗効果を生む道を探していけるなら、これまで見たことがない写実絵画を見せてくれるようになるのかも知れない。

武蔵美の卒業生でもある岡村 翔平君の作品は額縁のガラスをも絵画表現の一部に取り込んでいる。水滴で曇った窓ガラスの向こうにいる女性を描いているのだが、曇った窓ガラスを額縁のガラスに水滴状のメディウムで実際に曇らせることで表現している。何を使っているのかはよくわからないが、いくら近くに寄ってみても水滴にしか見えない。下手をすればただのアイデア勝負に陥ってしまうすれすれのところでうまく作品化している。この先彼がどのように作品を展開していけるのか、このパターンのままでは終わらないことを期待したい。

今回の入選作品の中でもし私が個人賞をあげることができるとすれば、松永 瑠利子さんだろう。正面から自分を描いた自画像。左右対称、なんの仕掛けもない。ただただ自分と向き合い時間をかけて描いた絵。しかし彼女の肉眼にこだわって対象を見つめる姿勢の強さにはすごみさえ感じる。ただ単に表面をなぞっただけではない。時間をかけて塗り込められた絵肌は強靱で必然性を持った強い存在感がある。たぶんまだ彼女は自分自身の特性を見つけていない。自分が何に興味を持ち、何をしたいのか。それでも愚鈍なまでに見たままを描き続ける先に何かをつかむことができるなら、彼女にしかできない本当の作家性を発揮するようになるだろうと期待している。

そのほかにも気になる作品は多い。ただの作品の羅列ではつまらないので気になった作品の一部を集めてみた。全体を知りたい方は是非ホキ美術館へ。

今回ホキ美術館名品展としてホキ美術館のメインになる作品が全国を巡回中なので、今行っても観るべきものがないんじゃないかと思っている方がいるとしたらそれは大間違い。ホキ美術館のコレクションはそれほど浅くはありません。メイン作家のいい作品はまだまだちゃんと残っています。そしてこのホキ美術館大賞展。次世代の新たな才能を見つけに連休中、是非足を運んでください。行く価値があることは保証します。そして勿論その際には一角で開催中の「スモールコレクション」展も!!

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